環境保護の情報メモ

有機農業の基礎知識(食品の質)

有機農産物の食品としての質に関する情報についてメモ書きしています。

※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。
  1. 硝酸態窒素の含量
  2. 殺虫剤残留
  3. ビタミン、ミネラル
  4. ネットニュースによる関連情報
硝酸態窒素の含量

※野菜に含まれる硝酸塩については以下の記事も参照。
野菜、果物全般の健康効果の”野菜に含まれる硝酸塩の概要と健康への影響”
●硝酸の悪影響
 
・野菜や水の中の硝酸の蓄積は、ある値を超えると有毒。
・硝酸は窒素と酸素が結合したもので、それ自体は無毒だが、それが収穫と消費までの間、または人間の消化管での細菌の作用で、還元されて亜硝酸になると有毒になる。
 亜硝酸は、メトヘモグロビン血症を引き起こす。さらに亜硝酸は生体内にあるアミンと結合して、ニトロサミンを生成させ、肝臓がんの誘引となる。なお、硝酸と殺虫剤の相互作用により、ニトロサミンの生成が促進されるとみられている。
 
●野菜の硝酸含量
 
・野菜中に硝酸が蓄積するのは、葉の中での硝酸の吸収とたんぱく質への転換との間のバランスが崩れ、その結果、吸収量が必要量を上回る事になるため。
 蓄積部位は根(ニンジン、カブなど)、茎と葉柄(ほうれん草など)、葉(レタス、ホウレンソウなど)
 
・フランス、スイス、オーストリア、オランダでの研究によると、有機栽培による野菜の中の硝酸含量は、慣行栽培のものに比べて明らかに少ないのが普通と言われている。
 日が長くなり、日射量が強まる春と夏ではこの違いがはっきりするが、冬は差が縮まる。
 
・硝酸の蓄積で一番重要な条件は光の量で、光が強ければ植物体内での硝酸含量は減る。季節の野菜を食べ、施設栽培のものを避ける事が推奨される。
 
・使用した有機質肥料にもよる。
 厩肥から作った堆肥は硝酸生成量が少ない。
 反対に、易溶性の有機質肥料は吸収の早い窒素を含み、尿液、鶏糞、血粉などは、とりわけ野菜中の硝酸を増やす。
 しかし施肥量を適正にし、易分解性の有機物を制限すれば、慣行と有機との間の含量の差は明らかになる。
 
・土の水分含量は収穫までできるだけ安定に保つようにする。サラダ菜を数日間だけ乾燥状態にしたあと、収穫前の数日だけ強く灌水すると、はっきりと硝酸の吸い上げがおこる。
 
※参考資料『カトリーヌ・ドゥ・シルギューイ(1997)有機農業の基本技術 八坂書房』

 

●2014年、愛媛大学のポッド実験の結果
 
・ポットに同じ土壌を同量充填して、化学肥料と有機質肥料を施用したものを設け、チンゲンサイを栽培。
・食味低下や健康被害が懸念される硝酸は、有機肥料施用により大きく低下していた。
 しかし、有機肥料の施用量を増加させると硝酸濃度も増加しており、過剰施用には留意する必要がある。
 
※参考資料『有機農業営農ビジョン構築支援事業報告書(2015)有機農業の基礎知識 日本土壌協会』

殺虫剤残留

・慣行栽培では、とくに果樹と野菜について、最終の農薬処理と収穫との間がひどく短い時は、この危険性がある。
 
・慣行農業で生産された無精白の食物は、精白したものよりも明らかに殺虫剤を余計に含んでいる。
 
・有機農産物は殺虫剤による汚染が非常に少ないが、なおいくつかの物質が残留していることを考えると、汚染がいつも全く無いとは言い切れない。
 近隣の畑からの水の浸透による偶発的な汚染が起こることもある。
 
※参考資料『カトリーヌ・ドゥ・シルギューイ(1997)有機農業の基本技術 八坂書房』

ビタミン、ミネラル

・有機農産物の品質については、論議が分かれるが、有機質肥料を施用した場合は、化学肥料施用に比べて、草型や栄養代謝、生育特性が異なるとともに、機能性成分含量が高まるなど、品質が向上するとする研究成果も出されてきている。
 
※参考資料『有機農業営農ビジョン構築支援事業報告書(2015)有機農業の基礎知識 日本土壌協会』

 

・化学分析によると有機農産物は乾物含量が高く、また、しばしばビタミン(とくにビタミンC)が多く、さらにアミノ酸、微量要素(鉄、マグネシウムなど)、ミネラルのバランスがよい。
 
・フランスのINSERM(保険・医学研究所)によると、小売されている5種類の野菜について比較したところ、そのうちの4種類(ジャガイモ、ブロッコリー、カブ、サラダ菜)では、マグネシウムと鉄の含量が有機農産物に多く、ほかの要素では大差がなかった。
 
※参考資料『カトリーヌ・ドゥ・シルギューイ(1997)有機農業の基本技術 八坂書房』

ネットニュースによる関連情報

●有機作物は抗酸化物質を多く含む?
 
・343件の査読論文を検討し、果物・野菜・穀物など有機作物と、従来農法作物の栄養品質と安全性をメタ分析により比較した。
・分析の結果、有機作物はその特殊な栽培法により、栄養上の恩恵が多いことが明らかとなった。全体として、有機作物は抗酸化物質の濃度が18-69%高かった。
 従来作物は、高レベルの合成窒素に触れることが多く、糖やでんぷんを生産するために余分な資源を必要とする。その結果、作物の収穫部分に健康を促進する抗酸化物質を含む栄養素の濃度が低くなるという。
 一方、有機作物は合成化学農薬がないため害虫の攻撃や災害から身を守るために、フェノールやポリフェノールを多く生成しようとするという。

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