環境保護の情報メモ

PM2.5、自動車排ガス対策の概要

PM2.5、自動車排ガス対策についてメモ書きしています。

※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。
  1. 自動車の排出ガス
  2. PM2.5とは?
  3. ディーゼル車と特徴と排出ガス
  4. PM2.5の健康影響
  5. 粒子状物質減少装置(DPF)の装着、開発
  6. クリーンディーゼル
  7. 排出ガス規制と排出量の状況、燃費の試験方法、WLTP
  8. PM2.5の規制
  9. ネットニュースによる関連情報
自動車の排出ガス

・自動車排出ガスの種類として、大気汚染防止法及び同法施行令は、自動車の運行に伴って発生する一酸化炭素、炭化水素、NOx、粒子状物質(PM)などをあげている。
 
※参考サイト
自動車排ガス対策 - 環境技術解説|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア

 

●ガス状物質
 
・NOx、SOx、CO2、メタンや非メタンなどのHC(炭化水素)。
・HC類とNOxは、太陽からの紫外線を受けて光化学反応を起こし、オキシダント(Ox)が生じる。
 
●粒子状物質(PM)
 
・SPM(浮遊流油脂上物質):10μm以下の粒子
・粗大粒子:2.5~10μm
 土埃や海塩粒子が主成分で、健康影響はあまりない。
・PM2.5:0.1~2.5μm
・超微粒子:0.1μm以下
 
※参考資料『杉本裕明,嵯峨井勝(2016)ディーゼル車に未来はあるか 岩波書店』

 

●ディーゼル排気粒子(DEP)
 
・DEPは、燃料の不完全燃焼に由来する粒子を核とし、その周りにエンジンオイル、未燃の燃料や生体に刺激を与えるようなホルムアルデヒドなどの酸化物やニトロ化物などの有機成分や硫酸塩や硝酸塩などが付着したもの。
 
・DEPの重量-粒径分布を見ると、重量として多いのは0.2μm程度(PM2.5:0.1~2.5μm)の粒子。
 
・重量としてはわずかだが、粒子数で見ると、0.1μm以下の超微粒子が多い。
 
・ディーゼル車の走行モードによりDEPの組成や粒径が変化することが研究で分かってきた。
 粒子数-粒径分布でみるとアイドリング時や減速時は未燃の燃料やエンジンオイル由来のものが多く、粒径は20~30nmが中心。
 一方、加速時や定速定常運転では炭素を核としてさまざまな物質が付着した粒子が多く、粒径は大きくなって60~80nm辺りが中心となる。
 
※参考サイト
微小粒子の健康影響 - アレルギーと循環機能|環境儀|国立環境研究所

PM2.5とは?

・直径が2.5μm以下の粒子状物質(PM)。
・ディーゼル自動車の排ガス、石炭・石油を燃料とする工場、発電所、家庭暖房などからの排煙中の粒子。
・排ガス中のSO2やNO2が光化学反応でできる二次生成粒子もある。
・中国の砂漠地帯からの黄砂や火山灰由来の粒子等も含まれる。
・日本の大都市部で問題になるPM2.5は主にディーゼル車由来の微小粒子(DEP)であり、工場排煙や発電所、ごみ焼却場、自然由来の粒子などの寄与は限られている。
 
※参考資料『嵯峨井勝(2014)PM2.5、危惧される健康への影響 本の泉社』

 

・ディーゼル排ガスや工場等の化石燃料の排煙などから出ている粒子。
・車や工場、事業所から出るNOxやHC、VOC(揮発性有機化学物質)から二次生成するものもある。
 
○成分
・炭素原子だけでできている元素状炭素(EC)
・有害物質が多い有機炭素(OC)。
・NOxやSOxから生じた物質および微量の重金属
 
※参考資料『杉本裕明,嵯峨井勝(2016)ディーゼル車に未来はあるか 岩波書店』

 

●浮遊粒子状物質(SPM)
 
・10μm以下の粒子
・硫黄酸化物、窒素酸化物が規制により大幅に削減されたことに比べると、自動車排ガス由来のSPMは窒素酸化物生成とのトレードオフ関係にあるため削減が難しい。
・黄砂、花粉など自然由来のものは年変動が大きく、環境基準の達成率がきわめて低い項目とされてきた。
・SPMは小さな粒子ほど毒性が強いことが多く、健康面での影響が心配されている。
 いったん吸い込まれた粒子は長いこと肺や体内に留まり免疫機構などに影響を及ぼす可能性がある。
 
●PM2.5
 
・自然界にはほとんど存在せず、人為的に作り出されるものが中心。
・ディーゼル自動車から排出される排気中の粒子(DEP)は、毒性が強いといわれる微小粒子(PM2.5)の主役と考えられている。
 
※参考サイト
微小粒子の健康影響 - アレルギーと循環機能|環境儀|国立環境研究所

ディーゼル車と特徴と排出ガス

・ディーゼル自動車は軽油を燃料とするディーゼルエンジンで動く車で、トラックやバスなどの大型車に広く用いられている。
・ディーゼルエンジンは、燃費が良く二酸化炭素の排出が抑えられる半面、PMを多く排出する短所がある。
 
※参考サイト
自動車排ガス対策 - 環境技術解説|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア

 

●ディーゼル車のメリット
 
・燃料の軽油がガソリンより安い。
・ガソリン車より10~20%燃費が良く、CO2排出量も少ない
・トルク(タイヤの回転力)が大きいため発進時や坂道を登る時に力を発揮し、エンジンが頑丈に造られているため、耐久性が高い。
 
●ディーゼル車のデメリット
 
・PMやNOxの排出量が多い。
・エンジンを頑丈にしたり、精密な燃料噴射装置や複雑な排ガスの後処理装置をつけたりするために車体価格が高くなる。同型車と比較して20~50万ほど高い。
 
・ガソリンは炭素数が少ないので気化して爆発しやすいのに対し、軽油は分子量が大きいので気化しづらく燃えづらい。
 
・ガソリンエンジンはピストン内に空気と気化させた燃料を混ぜてからプラグで点火、爆発させる。気化しやすいうえ、常圧下空気と混ぜるので均一に混ざり、完全燃焼するのでススが出づらい。
 一方、ディーゼル車はエンジン内の燃焼室に空気だけを注入して圧縮し、高温になったところへ軽油を直噴インジェクターで噴射し、自然着火による爆発を誘発させる。
 しかし、燃料と空気が均一に混ざらず、燃えづらい燃料であるため不完全燃焼を起こしやすく、燃えカスのススがたくさん出る。
 "コモンレール式燃料噴射システム"などの技術の進歩によって大きく改善はされているが、PMの発生は避けられない。
 
・ディーゼル車もガソリン車も排気ガス中にNOxが大量に排出される。
 ガソリン車は、CO、HC(炭化水素)、NOxを同時に浄化できる三元触媒が開発され大幅な規制強化がされたが、ディーゼルエンジンはススが多く出るので触媒が働かず、PMとNOxの両方を除去することが困難だった。
 その後技術開発が進み、ディーゼル粒子除去フィルター(DPF)によって改善されてきた。
 
※参考資料『杉本裕明,嵯峨井勝(2016)ディーゼル車に未来はあるか 岩波書店』

 

●ディーゼル車の特徴
 
・ディーゼルエンジンでは、高温のシリンダー内に燃料を噴射したとき、燃焼する条件が整ったところから発火が始まるため、過剰な空燃比(空気/燃料)でも作動する。
 
・ディーゼル車は、ガソリン車と比較して熱効率に優れ、結果として燃費が良くなるため、二酸化炭素の排出が抑えられる。
 しかし、空気が過剰だとNOxが発生し、逆に空気が不足すると燃え残った燃料が煤(すす)となるなど、ディーゼル車はNOxとPMの同時排出抑制が、三元触媒の採用が一般的であるガソリン車と比較して、難しい。
 
○NOxとPMの排出抑制対策
・燃料の噴射時期の改善等により、燃焼が良好に行なわれるようにする。
・触媒により汚染物質の酸化・還元を促進することで、環境負荷を低減する。
・排出ガス再循環(EGR)装置により、不活性な排出ガスを吸系統へ導入し、最高燃焼温度を低下させることで、窒素酸化物の発生を抑制する。
・DPFシステム(ディーゼル排気微粒子除去フィルター)システムにより、粒子状物質を除去する。
 
※参考サイト
クリーンディーゼル - 環境技術解説|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア

PM2.5の健康影響

●PM2.5の体内侵入経路
 
・呼吸器→気道
→気道上皮細胞を介して、また血管では血管内非細胞を介し、さらに脳では脳血液関門を介し、精巣には血液精巣関門を介して取り込まれる。
・鼻腔から鼻腔上部にある嗅覚上皮層を介して体内に取り込まれる。
・脳の場合、脳内のミクログリア細胞やアストロサイト細胞等に取り込まれ、様々な炎症性サイトカインや活性酸素等を産生して、脳・神経細胞を障害する。
 
●長期間の暴露による死亡率
 
○米国50州で30万人の成人ボランティアを対象にしたコホート研究
・PM2.5濃度が25μg/m3上昇するにつれて全死亡率は10%、心肺疾患死亡率は16%、肺がん死亡率は21%増加していた。
・50都市のPM2.5の平均濃度は18.2μg/m3で、日本の多くの都市部の自動車排出局と同程度。
 
○2013年、EUからの報告
・EUの13ヶ国、22のコホート研究論文をメタアナリシス(多データ解析)。
・喫煙、運動量、BMI、社会経済要因などを補正し、最終的に367,251人を平均13.9年間追跡。
・PM2.5濃度が5μg/m3増えるごとに早死のリスクが7%増えていた。
 
●長期間の暴露による循環器系への影響
 
○2007年、WHI観察研究(Women's Health Initiative)
・米国の50-79歳の閉経後の女性を対象にしたコホート研究
・PM2.5が25μg/m3増えるにつれて、循環器系疾患の発症危険率は1.71倍、心臓の冠動脈疾患では1.61倍、脳血管疾患(脳卒中)では2.12倍になった。
 
○2009年以降の10論文のメタアナラシス
・2009年以降のPM2.5長期暴露と脳卒中による死亡率に関する優れた10論文のメタアナラシスした総説。
・PM2.5が10μg/m3増えると脳卒中の死亡率は10.6%増える。
 
※参考資料『嵯峨井勝(2014)PM2.5、危惧される健康への影響 本の泉社』

 

●PM2.5と発がん性
 
・WHOの専門組織である国際がん研究機関(IARC)は、ディーゼル排ガスを発がんの危険性の確からしさについて2011年に、最も高い"発がん性がある"とするグループ1に指定している。
 
・岩井和郎と内山巌によって全国の肺がん死亡者の11.5%がDEP(ディーゼル排気微粒子)に起因すると推計された(2000年)
 
●心疾患や脳卒中など循環器系疾患とPM2.5
 
○1993年、ハーバード大学、"米国六都市調査"
・東部6都市の25~74歳の白人約8000人を対象。
・様々な大気汚染物質の濃度と死亡者数を14~16年間追跡。
・解析した結果、PM2.5濃度が死亡率との間に最も高い相関のあることが分かった。
・微小粒子濃度が最も高い都市の死亡率は最も低い都市の1.26倍。
・25μm/m3当たりの死亡危険度の増加は全死亡で1.36倍、肺がん死亡で1.51倍、心肺疾患死亡で1.51倍といずれも統計学的に有意であった。
 
○PM2.5による心疾患(死亡)のメカニズム
・DEPやPM2.5、特にナノ粒子は呼吸器などの細胞壁を越えて容易に血管の中に侵入し、多量の活性酸素を生じる。
→活性酸素は血管内で炎症を起こし、血液中のLDLを酸化
→動脈硬化
 
※参考資料『杉本裕明,嵯峨井勝(2016)ディーゼル車に未来はあるか 岩波書店』

 

●PM2.5曝露が呼吸・循環機能に及ぼす影響(動物実験による結果)
 
○心肺への影響
・呼吸循環系への急性影響を検討したところ、副交感神経の支配が強まり気道が狭くなったり心拍数の低下が起きることが見出された。
 
○肺炎症による呼吸機能低下等への影響
・換気機能検査やガス交換機能の変化を測定したところ、ディーゼル排気曝露によりいずれも低下することが確認された。
 
●DEPの吸入の影響
 
○PM2.5:0.1~2.5μm
・1μm以上の粒子は鼻腔や咽頭、喉頭などの上部気道に沈着する。
食道に飲み込まれたり、痰として体外に排出されたりする。
・0.1~1μmの粒子は、徐々に気管支や肺などの下部気道に沈着するようになるが、約60%程度はどこにも沈着せず、呼気といっしょに吐き出されてしまう。
 肺胞に沈着した粒子は、貪食され長く肺内にとどまったり、リンパ節に移動する。
 
○超微粒子:0.1μm以下
・小さくなるにしたがい肺への沈着が増し、20nmをピークとして肺胞への沈着は約50%に達する。
 さらに小さくなると気管支や気管から上部気道に沈着する割合が再び増加する。小さくなるに従い沈着する割合も増加し90%以上に達するようになる。
・20nm以下のナノ粒子は大きい粒子に比べ血流中に入りやすいことや、毒性と関係の深い表面積が多いことなどから、炎症、血栓を生じやすくさせたり、心臓や肝臓などの臓器に影響を及ぼすと考えられている。
 
※参考サイト
研究者に聞く!!|環境儀 No.22|国立環境研究所

粒子状物質減少装置(DPF)の装着、開発

・DPFと触媒を組み合わせて排ガス全般を処理するとともに、フィルターを連続的に再生するDPFの開発も進められている。
 
※参考サイト
自動車排ガス対策 - 環境技術解説|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア

 

・PM粒子をフィルタで物理的に捕集するもので、PM対策の有効な手法として開発が進められている。
 
・PMをDPFで捕集していくと、捕集量の増加とともに排ガスの排出が困難(圧力損失の増加)となり、最終的には車両の安定運転に支障をきたすことから、捕集・堆積したPMを除去しフィルターを再生する技術が重要になる。
 
※参考サイト
クリーンディーゼル - 環境技術解説|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア

クリーンディーゼル

・自動車単体についてみると、PMなどの排出ガスを低減し、規制に適合したクリーンディーゼル自動車の開発がヨーロッパを中心に進んでおり、ハイブリッド車など次世代の環境対応型自動車のライバルと目されている。
 
※参考サイト
自動車排ガス対策 - 環境技術解説|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア

 

・燃料の噴射時期の調節等による燃焼改善、触媒の使用による汚染物質の酸化・還元、DPF(ディーゼル排気微粒子除去フィルター)システムによる粒子状物質の除去などの要素技術を組み合わせたクリーンディーゼルエンジンの研究が進められており、新しい排ガス規制に適合したクリーンディーゼル車が市場に投入されている。
 
・自動車排ガス対策に加えて、地球温暖化対策の重要性が高まっており、クリーンディーゼル車は、環境低負荷でCO2排出削減のニーズに応える選択肢として、電気自動車や燃料電池車、ハイブリッド車などとともに普及が期待されている。
 
・ディーゼル車は、ガソリン乗用車よりも高速走行、市街地走行における燃費が2~3割良く、約30%のCO2排出削減が見込まれる。
 NOx、PMについても、ポスト新長期規制に対応したクリーンディーゼル車が普及することによって大きな改善が見込まれる。
 
※参考サイト
クリーンディーゼル - 環境技術解説|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア

排出ガス規制と排出量の状況、燃費の試験方法、WLTP

・VW事件が起きると、日本の国土交通省と環境省は共同で、国内のディーゼル小型車に"無効化機能"のソフトが備わっていないか路上検査した。
 その結果、不正ソフトは確認できなかったが、発売前の国の認証検査によるNOx規制値に対し、路上検査での排出量が数倍になっている車があった。
→国土交通省は、エンジンや触媒を保護するために、気温が下がったときに触媒やEGR(排ガス循環装置)が働かなくなるなどの"保護制御"の機能が備わっていたことなどが原因とした。
→国土交通省は、大型トラックなど重量車については"保護制御"を必要以上に作動させないために、外気温が0度以下の場合に限り"保護制御"の作動を認めたが、乗用車には規定はない。
 ↓
法定モードでは規制で定められた排出量になっていたとしても、実際には規制値を大幅に上回るNOxが排出されている可能性がある。
※関連情報
自動車:排出ガス不正事案を受けたディーゼル乗用車等検査方法見直し検討会 - 国土交通省
 
●WLTP(乗用車等の国際調和排出ガス・燃費試験法)
 
・各国ばらばらだった排ガスと燃費の試験方法を国際的に統一する。
・EU、米国、日本、インド、韓国の実走行データをもとに策定。
・この試験方法は最高速度、加速、走行距離など負荷を大きくし、EUや日本の法定モードより実走行に近い。
・EUでは2017年9月、日本には2018年中に導入される予定。
※関連情報
総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 省エネルギー小委員会 自動車判断基準ワーキンググループ(第2回)‐配布資料(METI/経済産業省)
 
・新車に対する排出ガス規制の強化については、例えば、ディーゼル重量車の窒素酸化物についてみると、1974年の規制開始以来、2005年10月からの新長期規制にいたるまで9回の規制強化がなされ、1台あたりの削減率は規制開始時に比べて86%となっている。
 
・PMについては、規制開始時の1994年以来、同じく新長期規制までに4回の規制強化が行われ、1台あたりの削減率は同96%に達している。
 
・新長期規制の導入により、ガソリン、LPG自動車及びディーゼル自動車排出ガス規制は世界で最も厳しいレベルに強化された。
 
●交通量が多く交通渋滞が激しい大都市地域での対応
 
・自動車排出ガスに含まれる二酸化窒素や浮遊粒子状物質(SPM)について、大都市圏を中心に環境基準を達成していない測定局がみられる。
 このため、1992年に自動車NOx法が制定され、さらに2001年には、SPM対策を盛り込むなどの改正が行われて自動車NOx・PM法が成立した。
 同法は、一定の自動車について、NOxやPMの排出が少ない車を使用する車種規制を導入し、首都圏、大阪・兵庫圏、愛知・三重圏の大都市圏において使用できる車が制限された。
 
・2007年に成立した改正自動車NOx・PM法では、局地汚染対策として、大気汚染が深刻な交差点などを都道府県知事が"重点対策地区"に指定し、重点対策計画を策定して対策を実施している。
 
※参考サイト
自動車排ガス対策 - 環境技術解説|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア

ネットニュースによる関連情報

●粒子状物質(PM)と肺機能、ビタミンEとの関係
 
・肺機能と血中の代謝産物の関係を検討した。これらの代謝産物とPM10およびPM2.5(各々粒子径が10ミクロン、2.5ミクロン以下の粒子)への曝露の関係を、血液と居住間環境における汚染濃度を測定して分析した。
・データ解析の結果、13種の代謝物が、肺機能と有意な関連を持つことが明らかになった。そのうちの8種はPM2.5およびPM10の曝露とも有意に関連していた。PMへの曝露が高まるとこれら代謝物濃度と肺機能は低下した。
 これら8種の代謝物のうち、2種は良く知られた抗酸化物質であるα-トコフェノール(ビタミンE)とスレオネート(ビタミンCの代謝産物)だった。
 最も強い関連は、ビタミンEとPM2.5、肺機能の間に見られた。PM2.5への曝露が最も高かった者は、血中α-トコフェノール濃度が有意に低く、また肺機能も低かった。
 今回の知見は、PMの障害が酸化性のものであり、α-トコフェロールが酸化障害を最小にするために消費されているという仮説を支持するものである。

PM2.5の規制

●PM2.5の規制
 
・米国で1997年、EUで2007に設定され、日本では2009年に定められた。
・基準値は年平均値が1m3あたり15μg以下で、かつ日平均値が35μg以下とされている。
 
・米国や日本の排ガス規制には、"量"で評価する規制しかないが、EUではディーゼル車に対し、小型車は1kmあたり、重量車は1kW時当たりの"粒子数"を6×1011以下に規制している。
 
・日本での環境基準の達成率は、NO2とSPMは全国の測定局でほぼ達成されているが、PM2.5は住宅地にある測定局で16%、幹線道路沿いの測定局で13%と極めて低い。
 ただ、ディーゼル車の規制強化で測定値は徐々に下がる傾向にある。
 九州・中国・四国地方ではその約6割、近畿地方は約5割、関東地方では約4割が中国由来と言われ、残りは国内で発生したもの。
 
・東京都の調査(2008年)では都のPM2.5の約16%を車の排ガスが占めていた。
 
●微小粒子状物質の規制
 
・最近のディーゼル車は、電子制御で高圧で燃料を噴射するシステムが開発され、燃焼状態をつくり出すことができるようになり、真っ黒なススは出なくなったが、超微粒子は残っている。
・EUは超微粒子の粒子個数規制を2011年から段階的に実施している。
 
●PM2.5の排出実態
 
・PM2.5はディーゼル粒子除去フィルター(DPF)をつけることで、微粒子の重さでは約9割以上除去できる。
 DPFをつけた車では大型車でも超微粒子をかなり除去できると言われているが、日本には粒子の重さでの規制はあっても排出個数の規制がなく、排出実態はよく分かっていない。
 
・CAFEE(米ウエストバージニア大学の代替燃料・エンジン・排ガスセンター)の実験では、粒子をフィルターで除去するDPFが作動している間はEUの個数規制の基準を満たして低排出だが、DPF内にススがたまってくると機能が低下した。
 ススを燃やしてその機能を回復するまでの間はDPFは働かず、粒子の個数が大幅に増えることがわかった。
 
●ガソリン車からのPM2.5
 
・最近ガソリン車で、ディーゼルエンジンと同じように燃料を高圧で噴射する直噴エンジンが広がっている。
→熱効率を高めて燃費を良くするのが狙いだが、それによってPMが発生するようになった。
 
・この直噴車の多くにはDPFは取り付けられておらず、DPFをつけたディーゼル車よりも多くのPMを排出する。
 
・EUはガソリン直噴車にもPM規制(2009年)と個数規制(2014年)を導入しているが、日本はごく特殊な車に重量規制しているだけという状況。
 
※参考資料『杉本裕明,嵯峨井勝(2016)ディーゼル車に未来はあるか 岩波書店』

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