環境保護の情報メモ

固定種の野菜とF1の野菜

固定種の野菜とF1の野菜の情報についてメモ書きしています。

※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。
  1. 土地固有の野菜
  2. 固定種
  3. F1(一代雑種、ハイブリッド、交配種)
  4. F1と固定種の利点
  5. F1の作り方
土地固有の野菜

・よくできた野菜からタネを採れば、その野菜はその土地に適応し、その風土に合った子孫を残す。この植物の適応力を順化と言い、順化と交雑によってその土地固有の野菜が生まれた。
 
・よくできた野菜を選抜し、タネ採りを続けると、三年程度でその土地やその栽培方法に合った野菜に変化していく。
 
※参考資料『野口勲(2011)タネが危ない 日本経済新聞出版社』

固定種

・味や形などの形質が固定され、品種として独立していると認められたタネのこと。
 
・一代雑種(F1、ハイブリッド、交配種)と比べ単一系統の遺伝子しか持たないので、単種と言われることもある。
 
・形質が固定されていたとしても、ひとつひとつのタネが多様性を持っているため、生育の速度が異なり、一斉に収穫することができない。
 
※参考資料『野口勲(2011)タネが危ない 日本経済新聞出版社』

F1(一代雑種、ハイブリッド、交配種)

・雑種の一代目には両親の対立遺伝子の優性形質だけが現れ、見た目が均一に揃う。
できた野菜はほとんど同じような形状に揃って、個体差が少ない。
 
・系統が遠く離れた雑種の一代目には雑種強勢という力が働いて、生育が早まったり、収量が増加する。
 
・雑種の一代目だけが揃いの良い生育旺盛な野菜になる。この雑種からタネを採っても親と同じ野菜はできず、品質もばらばら。毎年タネを購入する必要がある。
 
※参考資料『野口勲(2011)タネが危ない 日本経済新聞出版社』

F1と固定種の利点

●固定種
・味が良い(伝統野菜の場合)
・自家採種できる。
・多様性・環境適応力がある。
・長期収穫できる(自家菜園向き)
→生育速度に個体差があるので、収穫時期がずれ、長期間少しずつ収穫できる。
・さまざまな病気に耐病性を持つ個体がある。
・オリジナル野菜を作れる。
 
●F1
・揃いが良い(出荷に有利)
→工場製品のように均一に揃った野菜は、箱詰めして出荷する際、規格外として除外される生産ロスを少なくする。固定種の時代の野菜は、大きさが不揃いのため、重さを量って重量単位で販売していた。
・毎年タネが売れる
・生育が早く収穫後の日持ちがよい(雑種強勢が働いた場合)
→生育が早くなると畑を早く空にでき、次の栽培が開始でき、土地の利用効率が向上する。
・特定の病害に耐病性をつけやすい
・特定の形質を導入しやすい
・作型や味など流行に合わせたバリエーションを作りやすい
 
●有機栽培との関係
・有機認証基準では、"種子も有機栽培で育てられたものを使うこと"と決められている。
→種苗会社が販売しているタネではこの規格を満たせず、自家採取する必要がある。
 
●F1の品質
・生育期間が短くなった結果、細胞の密度が粗くなり、大味になりがち。
・葉緑体による光合成の期間も相対的に短くなるので、葉に含まれるビタミンCなどの栄養価が固定種と比べて大幅に減少した?
 
※参考資料『野口勲(2011)タネが危ない 日本経済新聞出版社』

F1の作り方

●除雄(じょゆう)
 
自然に任せていたら自家受粉(自分の雄しべの花粉で雌しべが受粉)されてしまう。
 そこで、受精可能になる前のつぼみのとき、つぼみを開き、雄しべを取り除く。雌しべが受精可能になったときに、別の品種の花粉を雌しべにつけて受粉させる。
 
●自家不和合性を利用
 
○自家不和合性とは?
・アブラナ科の野菜は、自分の花粉でタネをつけることができず、他の株でないとタネがつかない(自家不和合性)。
・自家不和合性の性質は、つぼみのときには働かず、花が成熟してから働く。
・一つのタネから生えた同じ株の花粉では受粉できないが、同じ母親から採れたタネ(兄弟分)であればタネができたりする。
 
○自家不和合性を利用したF1の作り方
 
①兄弟の花粉がくっついても受精しないよう、純系の度合いを強めてホモ化させ、絶対に実らないようにする。
 
(昔のやり方、つぼみ受粉)
・つぼみのときに、すでに咲いている自分の成熟した花粉を使って受粉させる。
・この作業を多数のつぼみに対して行うと、一つの株からクローンを多数作ることができる。
・人が小さなつぼみを開いて花粉をつけるのは、非常に細かい作業で手間がかかる。
 
(現在のやり方、二酸化炭素を利用)
・最初の一株の数千個のつぼみに対してつぼみ受粉でクローンのタネを採取。
・このタネをハウス内に播く。
・花が咲く頃にハウスを密閉し、二酸化炭素を入れて二酸化炭素濃度を大気の百倍以上の3~5%にする。
・花の生理が狂って、成熟した花が自分の花粉でも受粉してタネをつけるようになる。
・ハウス内にミツバチを放し、ミツバチによって受粉させる。
 
このクローンのタネを使って育てると、花が咲いて近くにある兄弟の株の花粉がくっついてしまったとしても自分のクローンなのでタネはできない。
 
②このような状態にした異なる2種類の品種のタネを畑に交互の列に播いて育てると、どちらも自分(クローン)の花粉とは受粉しないので、相手の花粉で受粉させることができる。
 
●雄性不稔を利用
 
・雄性不稔とは、植物の葯や雄しべが退化し、花粉が機能的に不完全になることを言う。
 
・この雄しべが不完全な花であれば、雄しべを除去する必要が無く、近くに必要な性質を持つ別の品種を植えておけば簡単にF1を作ることができる。
 
・この雄性不稔の花(母親)の雌しべに別の品種(父親)の雄しべの花粉を受粉させて出来たタネから出来た子孫は、同様に雄性不稔の性質を受け継ぐ。(雄性不稔は母系遺伝)
 
○雄性不稔が母系遺伝の理由
・雄性不稔はミトコンドリア遺伝子の異常が原因。
・ミトコンドリア遺伝子の異常は、母系遺伝するので、雄性不稔も母系遺伝する。
 
※参考資料『野口勲(2011)タネが危ない 日本経済新聞出版社』

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