環境保護の情報メモ

養殖魚に対する期待と問題点

養殖魚に対する期待と問題点についての情報をメモ書きしています。

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  1. 養殖魚に対する期待、青の革命
  2. 養殖魚用の餌の不足
  3. 養殖魚の病気、抗生物質、ワクチン
  4. 養殖漁業による環境悪化
  5. 養殖魚の品質
  6. 三倍体法
養殖魚に対する期待、青の革命

●青の革命
 
・魚は本質的に餌効率が高い。冷血動物で、水の力を利用して動き、体重を水で支えていることから、陸生生物と比べて体の維持に費やすカロリーがはるかに少ないため、より太りやすい。
 
・陸生動物より大量養殖が可能で、品種改良がしやすい。
 
・養殖魚に使える植物由来の餌を開発できれば、餌の投入量が同じでも陸生の家畜と比べて3倍も多くのタンパク質を産出できる。
 
・汚水の問題や抗生物質への過度な依存が欠点。
 
※参考情報『ポール・ロバーツ(2012)食の終焉  ダイヤモンド社』

 

●餌効率が高い
 
・牛や豚に比べ飼料を魚肉に転換する効率が高い。
 
○畜産物と水産物の増肉係数(1kg成長するのに必要な餌の量)
・ブリ類 2.8
・マダイ 2.7
・ギンザケ 1.5
・牛 10~11
・豚 3.0
・鶏 2.0
 
※参考サイト
水産庁/(1)養殖業の意義

養殖魚用の餌の不足

●養殖魚用の餌の種類
 
○生餌(なまえ)
・種類や季節によって脂肪含有量等栄養成分が大きく異なってまう。
→偏った栄養バランスにより成長が遅れてしまうことがある。
・沈みやすい上に腐敗しやすい内臓を含んでいるため養殖場の海底を汚しやすい。
→赤潮が発生しやすくなる。漁場の汚染と相まって病気を誘発したりする。
・品質面でもいわゆる"イワシ臭い"養殖魚の原因となる。
・クロマグロ等栄養面の研究が進んでおらず生餌を好んで摂食する養殖魚では依然として生餌が主体。
 
○モイストペレット(Moist Pellet、MP)
・養殖現場で粉末配合飼料(魚粉などが主原料)と生餌を混ぜ、必要に応じて法律で認められた飼料添加物等を加えた上で粒状に成型して作る。
・生餌に比べ栄養バランスが安定し、足りない栄養素を加えることも容易。
・粒状なので養殖魚が食べやすいことから漁場汚染も大幅に抑えることが可能。
・現場で魚の様子を見ながら原料の配合割合を変えて給餌できるメリットがあり、そのメリットを重視する養殖業者に用いられている。
 
○エクストルーデッドペレット(Extruded Pellet、EP)
・工場で配合飼料(魚粉などが主原料)に栄養剤等を適宜混ぜた後、高圧下で乾燥した多孔質ペレットとして成型したもの。
・養殖場ではそのまま手を加えずに給餌できる。
・その場での調製が不要で変質しにくいため、自動給餌機での使用も可能であり、人件費の削減や荒天時の給餌に効果を発揮している。
・EPは水がしみこむまでは海面上で浮くため、一時的に食べ残されてもしばらくは浮かんでいて後からでも魚が食べられること等により、さらに漁場が汚染されにくくなるメリットもある。
・MPより保存性を良くするとともに餌に含まれる栄養成分を一定にして養殖魚の品質を統一することを図っている。
・取引上養殖魚の品質を一定に保つことが求められている養殖業者や汚染されやすい漁場で用いられている。
 
●魚粉(フィッシュミール)
 
○魚粉とは?
・魚を乾燥して砕き粉状にしたもの。
・主に飼料(養殖、養鶏、養豚など)や有機肥料として使用されるが、食用として料理の際に用いることもある。
・魚を窯で煮熟したあとに圧搾機で油と水を分離し、乾燥させ粉末にする。
・原料魚としては世界的にはイワシ(アンチョビ)などが対象となることが多い。
日本では、スケトウダラ、サンマ、ニシンを用いる。
 
○魚粉の需給、価格
・魚類養殖や畜産業が世界的に盛んになっている中、魚粉の需要は世界的に増大し、価格も上昇を続けている。
・平成16(2004)年に平均76円/㎏であったものが平成25(2013)年には154円/㎏と約2倍になり、過去最高の水準に達している。
・魚粉は需要の増大だけでなく、資源変動の大きいカタクチイワシ等を原料としているため生産量の増減が激しく、価格の動向を一層不安定なものとしている。
 
●生餌の需給、価格
 
・主にサバ類、イワシ類及びアジ等浮魚類の中でも小型サイズのものが利用されているが、近年では小型のサバ類について輸出用としての需要が増え、生餌用に回るものの割合が低下している。
 このため、浮魚類の漁獲そのものは好調であっても養殖用生餌向けの出荷が減少しており相場も高止まりしている。
 
○クロマグロ養殖と生餌の消費
・クロマグロ養殖では、餌は主にサバ類とアジ類が多く、イワシ類やイカ類も使われている。
・クロマグロが1㎏成長するために必要な餌の量は14~15㎏といわれているので、クロマグロの種苗から平均出荷サイズである50㎏まで育てるのに消費される生餌の量は約700㎏になる。
 
※参考サイト
水産庁/(4)養殖用餌料の改良

 

●養殖魚のえさとなる小魚が大量に必要
 
・毎年、約1兆匹の養殖魚が生産されていて、個体数では鶏、牛、豚などの陸生家畜の総計より300億匹多い。
 
・養魚場は、海の負担を減らして天然魚を保護するどころか、サーモンやトラウトのような肉食性の魚の餌となる小魚を、海からさらに多く奪い取っている。
 トラウトやサーモンのような養殖魚を1トン生産するのに、小魚を3トンから5トン必要とする。
 
・養殖漁業が急速に発展している中国やインド、ベトナムなどでは、養殖魚は集約的畜産場から出る糞便を含む飼料を与えられている。
 
●浮魚の枯渇
 
・カタクチイワシやニシン、ニシン属の小魚、サバ
 
・世界で水揚げされる魚の23%は浮魚(海面近くを群れで回遊する小魚)で、それらは養殖魚の餌や魚油となる。
 さらに、この水揚げされた魚の1/3もが、鶏や豚といった家畜の餌にされている。
 
・浮魚を動物の餌にすることは、魚の乱獲を招き、ひいては魚資源の枯渇を招く。一部の海域の浮魚は枯渇している。
 
●魚粉、魚油(主にペルーでの話?)
 
・主に養殖魚の餌になる魚粉や魚油を作るために浮魚が使われている。
 
・魚粉は切り落としや、加工する際の余りものから作られるわけではなく、大半は人間でも十分食べることができる栄養価の高い魚肉から作られている。
 
・生魚を蒸気で消毒し、水分を絞り出し、貴重な油分を分離し、残ったものを加熱し、乾燥させて固形にする。
 乾燥の工程で栄養分が圧縮され、ゴミとなる血液、内臓、鱗、脂肪などは廃棄される。大方の工場では生のまま捨てている。
 工場の中には、操業シーズンの終わりに、苛性ソーダでパイプ内のヘドロを洗い流すところもあり、有害な化学物質が海に流れ込む。
 
・魚粉は、大量の小魚を海から吸い上げ、つぶして魚油を搾り、養殖魚、豚、鶏用の乾燥飼料にしている。
 これは、大きな天然魚や鳥、海洋哺乳動物から食料を略奪することであり、重要な種の激減を招く。
 汚れた油性廃棄物を垂れ流し、海にデットゾーンを作る。
 
※参考情報『フィリップ・リンベリー(2015)ファーマゲドン 日経BP社』

養殖魚の病気、抗生物質、ワクチン

●養魚場は狭い檻、高密度で生育
 
・魚たちは、白内障による失明、ヒレや尾の損傷、体の変形、寄生虫感染に苦しみながら、空間と酸素を求める競争を強いられる。
 
・サーモンの状況は、体長75センチの魚が一人用の浴槽で飼われているようなもの。体長30センチほどのトラウト27匹が、一人用の浴槽。
 
・仲間の体やケージの側面と擦れ合って、ヒレや尾がぼろぼろになる。
 
・過密と閉じ込められているストレスのせいで、病気への抵抗力が衰える。養殖サーモンの死亡率が10~30%になることもある。
 
※参考情報『フィリップ・リンベリー(2015)ファーマゲドン 日経BP社』

 

●養殖魚の抗生物質
 
・密集した養殖場で飼育されるサケ、エビ、ロブスターなどには、かなり高い量の抗生物質が投与されている。
・成長促進のためだけでなく、密集した状況下で生じる病気の予防のため。
・家畜と同様、食品医薬品局は、こうした魚介類に対しても一定の浄化期間を置くように求めているが、検査が行われることは稀。
・特にアジアで育てられた魚類や甲殻類は、汚染されている可能性が高い。法律違反が頻発している。
 
※参考資料『マーティン・J.ブレイザー(2015)失われてゆく、我々の内なる細菌 みすず書房』

 

●日本における養殖魚の病気
 
○アユ
・1987年にアユ冷水病と呼ばれる病気が発生し、徐々に全国に広まった。
・稚魚の移動前及び河川への放流前での検査による菌の有無の確認の徹底や適正な飼育環境の確保等の防疫対策が講じられ、2004年以降は発生が大きく減少している。
 
○コイ
・2003年にコイヘルペスウイルス病と呼ばれる病気が発生し、発生から2か月で全国に感染が拡大した。
・コイの移動制限や殺処分等のまん延防止措置等により発生件数は大きく減少した。
 
○海面魚類
・かつて連鎖球菌症、類結節症等各種の病気がまん延し、その治療のため抗菌性の水産用医薬品が多く使用されていた。
・現在では主要な病気に対するワクチンが普及しており、魚病の発生は大きく減少した。さらに養殖漁場の環境改善により、そのほかの病気についても発生は少なくなっている。
 
●抗生物質、水産用医薬品の使用
 
・かつては、海面魚類養殖業において連鎖球菌症、類結節症等各種の病気がまん延し、その治療のため抗菌性の水産用医薬品が多く使用されていた。
・その後、ワクチンの普及や養殖漁場の環境改善により病気の発生が減少し、ワクチンを除く水産用医薬品の使用は大きく減少している。
 
○水産用医薬品の使用のルール
・医薬品の過剰投与等により食品中に薬品が残留しないよう、"薬事法"により国が認めた医薬品以外の医薬品の使用を規制している。
・抗菌性の水産用医薬品・駆虫剤については使用できる動物の種類、用法・用量及び使用禁止期間を定め、その遵守を義務づけている。
・医薬品や水産用ワクチンの適正な使用について、各都道府県の水産試験場等の指導機関が適切に指導する体制が整えられている。
 
●水産用ワクチン
 
・ワクチン実用化以前は魚病被害の対策として抗菌性薬剤の治療に頼っていたが、近年では抗菌剤の魚への残留に対する消費者の懸念が高まっているほか、薬剤が無効なウイルス病の流行があり、これらの諸問題を解決できるワクチンの実用化が進められた。
・ワクチンの安全性と有効性は、"薬事法"に基づく国の承認や検定等の各種の制度により確認されている。
・現在市販されている水産用のワクチンは、感染力を無くした病原体を利用した"不活化ワクチン"。
 
○水産用ワクチンの接種方法
・経口投与法、浸漬法、注射法などの接種方法がある。
・使用するワクチン量が少なく、規定量の投与が確実と考えられる"注射法"が主流。
・注射法によるワクチンの接種は養殖魚1尾ずつにワクチン液を注射して行われているため労力の負担も大きいものとなっている。
 このため、ワクチンのカートリッジを換えなくても良い連続注射器を利用し、負担の軽減を図っている。
 
※参考サイト
水産庁/(5)魚病の発生状況と水産用医薬品等の使用

養殖漁業による環境悪化

●養殖業による環境悪化
 
・海中での養殖業では糞や食べ残しの掃除がしにくいため、養殖漁場が汚染され、近隣の海面全般に悪影響を及ぼす可能性がある。
・密集して生育するため、病気に感染しやすくなる。また、付着性の生物が養殖水産物や施設等に付着して、潮通しを悪くしたり餌を奪うなど、養殖水産物に悪影響を与えることがある。
 このため、養殖生産においては、必要に応じて水産用医薬品や有害生物の除去のための薬品を使用いる。
 
・養殖では、食べ残された餌や糞により海底に大量にたまった有機物が海中の酸素を大量に消費するだけでなく、毒性を持つ硫化物を発生させるため、生物に悪影響を与える。
 
・有機物が海中に溶け出すと海域の富栄養化により赤潮を誘発する危険性が高まる。
 
○日本における対策
・"持続的養殖生産確保法"に基づき策定された漁場改善計画を養殖業者が実施することにより漁場環境の悪化を防止している。
・具体的には、魚類等の給餌養殖においては、これまでより魚類等の飼育尾数を5%以上減らして餌の食べ残しや糞を減らしたり、配合飼料等の使用促進や病気予防のためのワクチンの投与等の措置が採られている。
・生簀(いけす)の直下等で悪化した海底環境を改善するため、海底を耕して酸素を取り入れたり、石灰を撒いて硫化水素の発生を防ぐといった方法がとられている。
 
※参考サイト
水産庁/(2)漁場環境

養殖魚の品質

・養殖のサーモンやトラウトは、天然のものより脂肪が多い。
 
・養殖魚に含まれる化学物質の含有量が懸念されるレベルに達している。(インディアナ大学 ロナルド・ハイト 2004年)
 
・養殖魚を健康そうな色にするために着色料(カンタキサンチン、アスタキサンチンなど)が使用されている。
→天然のサーモンやトラウトは甲穀類や藻類を食べ、それが肉をピンク色にする。
 
※参考情報『フィリップ・リンベリー(2015)ファーマゲドン 日経BP社』

三倍体法

・トラウト(鱒)養殖に広く用いられている。
 
・オスでもメスでもない繁殖能力のない魚を作る技法。
 トラウトから卵と精子を集め、熱を加えて受精させると減数分裂が抑制され、本来なら1本消えるはずの母親の染色体が2つとも残り、3本の染色体を持つ魚が生まれる。この魚は生殖能力がない。
 
・魚は成熟すると食欲が落ち、全エネルギーを繁殖行動に注ぎ込むようになる。
 魚を性的に成熟しないようにするこの方法は、資源の有効活用につながる。下ごしらえ(はらわたを抜く作業)でのロスを16~25%減らすことができ、餌を9%節約できる。
 
・3倍体の魚は温度変化に弱いが、少しおとなしいので、群れが穏やかになり管理しやすい。脱走しても繁殖しない。
 
・2015年、英国環境省は、天然魚資源を保護する目的で、国内の養殖プラントはすべて3倍体処理しなければならないと定めた。
 
・3倍体の魚には、形状の異常、呼吸器の故障、血中ヘモグロビン低下、ストレスへの対処能力の低さが見られる。
 
※参考情報『フィリップ・リンベリー(2015)ファーマゲドン 日経BP社』

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