下水道システムの概要についてメモ書きしています。
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- 下水処理の概要
- 下水処理の現状
- 下水の収集方式
- 合流式下水道の改善
- 雨水の貯留、浸透施設
- 下水処理場の主な施設
- 下水の段階処理の概要
- 下水の高度処理(三次処理)
- 汚泥処理
- 好気性生物処理法:浮遊生物法
- 好気性生物処理法:生物膜法
- 固液分離法:膜分離活性汚泥法
- 嫌気性下水処理技術
- 酸化池・ラグーン
- 富栄養化化学物質への対応
下水処理の概要
・下水を集めて処理施設へと流す下水管路網と、排水中の汚濁物質を処理し環境へと戻す処理施設とで構成される。 ・下水処理では、物理的、化学的、生物学的な方法のすべてが用いられるが、日本では、好気性生物処理法による下水処理が一般的。 ・好気性生物処理法は浮遊微生物法と生物膜法とに大別できるが、現在は浮遊微生物法の一つである標準活性汚泥法が最も主流。 ※参考サイト 下水処理 - 環境技術解説|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア
下水処理の現状
・平成18年度末の全国の下水道普及率平均は70.5%。 ・人口規模の大きな都市の下水道普及率は高く、100万人以上の都市では普及率98.4%である一方、人口5万人未満の市町村の下水道普及率は41.2%と、全国平均を大きく下回っている。 ※参考サイト 下水処理 - 環境技術解説|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア
下水の収集方式
●合流式 ・汚水と雨水を1本の管に合流させて下水処理場で処理。 ・水洗化普及と浸水対策が同時に解決できる。 ・下水処理場の処理能力を越える大雨の際には、管路の途中に設けた"余水吐"から未処理下水の一部を河川に放流する。 ・降雨初期の汚濁度の高い排水の処理が可能。 ・下水処理場の規模が大きくなる。 ●分流式 ・汚水と雨水を別々の管で集めて、雨水は河川へ放流し、汚水は下水処理場で処理する。 ・雨の降り始めに道路や広場の表面を流れた汚染度の(初期汚濁)の高い排水はそのまま河川へ流れる。 ・建設費は、管路が2本になるので高くなるが、下水処理場は、汚水のみが対象となるので規模は小さくなり建設費は下がる。 ※参考資料『長澤靖之(2012)上下水道が一番わかる 技術評論社』
●雨水吐(うすいばき) ・合流式下水道の場合、雨水の流量がある一定量より増えると希釈された下水が雨水吐の越流堰を越えて、河川や海等に放流される仕組みになっている。 ・雨水吐の設置位置は、できるだけ放流水域の近くで、上水道の取水口や漁業などに影響を与えない場所を選定する必要がある。 ・雨水吐から放流される下水は希釈されて流出することを基本としているが、堰から越流する初期下水が問題となっている。 ※参考資料『高堂彰二(2012)トコトンやさしい下水道の本 日刊工業新聞社』
●合流式下水道 ・汚水と雨水を合わせて収集処理する方式。 ・東京都区部や大阪市などの大都市をはじめ、概ね高度成長期までに下水道整備に着手した都市で採用されている。 ・処理能力を超えた下水が下水処理場に流入しないように、下水道管(合流管)の途中に分水堰と称する堰を設けて、堰を越える量の下水(汚水+雨水)はそのまま川や海に放流される仕組みになっている。 →大雨時には未処理の下水の一部が川や海に放流される ※参考資料『玉真俊彦(2011)管があぶない ぎょうせい』
合流式下水道の改善
○合流式下水道雨天時越流水(CSO)への対応 ・東京都のように、1970年以前に下水道整備をした都市では、合流式下水道が多い。 ・この方式は、一本の管で下水と雨水を処理できるので、工事費用を抑えることができた。 ・雨天時には下水処理場の処理能力を超える水量が一時的に発生してしまうため、排水に簡易な処理を施しただけ(あるいは未処理)で環境中へ放流しなければならない。 この中には、家庭や事業所からの排水に含まれる油分や汚物が下水管に付着した固形物が含まれているため、雨天時に放流先の環境水質が悪化していた。 なお、これらの固形物が放流・漂着されたものが、オイルボールと考えられている。 ・1970年の下水道法が改定以後整備された下水道はほとんどが分流式だが、それ以前に整備した合流式下水道を分流式に変更することは、莫大な工事費用や、新たな管(雨水管)を埋設する場所の確保、宅地の排水の分流化などが必要になることから、実現が難しい。 そこで、分流式下水道への変更以外の方法での改善事業も進められている。 ・東京都の改善例では、雨水が集まる"雨水吐室"内の越流せきをかさ上げし、雨天時に未処理で放流される排水の量を減らしている。 一時的に水再生センター(下水処理場)での処理量を超える分の排水は、地下の貯留施設に溜め込み、降雨後の余裕があるときに水再生センターへ送って処理する。 さらに、未処理下水及び簡易処理水に対して、短期間で消毒ができる臭素消毒設備を整備するなど、未処理水の環境流出を極力抑えている。 ・改善事業はまだ途上であり、国土交通省は、合流式下水道を有する191都市のうち80都市が「改善事業が計画通りに進んでいない」(平成20年)と評価している。 ※参考サイト 下水処理 - 環境技術解説|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア
○貯留施設の設置 ・ファーストフラッシュ(雨水の流出開始直後の高濃度の下水流下現象)を貯留して、雨が止んだら下水処理場に送る。 ○雨水吐の改造 ・雨水吐の堰をかさ上げすることにより、未処理の下水の放流を極力防止する。 ○スクリーンの設置 ・雨水吐の堰にスクリーンを設置して、夾雑物が河川などに放流されるのを防ぐ。 ○雨水流出抑制施設の設置 ・雨水浸透施設などを設置して、合流管に雨水の流入を少なくする。 ○ポンプ場からの放流水の水質向上 ・雨天時にポンプ場の能力以上の下水の流入がある場合は放流されていたが、高速濾過施設を設置して放流水の水質向上を図る。 ○スワール分水槽 ・雨水吐室の代わりにスワール分水槽を設置する。 ・合流管からの水は、水槽内に接線方向に流入させると、槽内外周部の下向きの旋回流と槽中心部の上向きの旋回流が発生する。 沈殿性の固形物はこの流れと重力によって沈殿し、浮遊性の固形物は、スワール分水槽上部に浮上して捕捉され、降雨終了後の水位の低下に伴い沈殿物と共に処理場へと流下する。 ・上記のように、沈殿性や浮遊性の固形物を除去した雨水を、上部より放流する。 ※参考資料『高堂彰二(2012)トコトンやさしい下水道の本 日刊工業新聞社』
・2009年度末で下水道が施設されている1,442の都市の内、191で合流式が行われている。 ・合流式下水道を採用している都市は、東京都、大阪市、京都市、神戸市などの下水道先駆都市。 ・2003年に下水道法施行令が、以下の3点を主目標に改正された。 ①分流式下水道と同等の汚濁量に削減する。 ②未処理水の放流回数を半減させる。 ③夾雑物(きょうざつぶつ:あるものの中にまじっている余計なもの)の流出を防止する。 ・主な具体策 ①下水処理場の処理能力を超す下水を処理場に流入する前に一時的に貯水し、降雨後下水管に戻す。 ②雨水浸透施設により雨水を土中に浸透させ、合流管への流入量を減らす。 ③簡易処理施設により余水吐から下水を川へ流す前に夾雑物をスクリーンで取り除き消毒する。 ※参考資料『長澤靖之(2012)上下水道が一番わかる 技術評論社』
雨水の貯留、浸透施設
●雨水浸透施設 ○浸透トレンチ ・掘削した溝に砕石を充填し、有孔性の材料で作られたパイプを布設したもの。 ○浸透ます ・浸透ますの周りを砕石で充填し、集水した雨水を底部や側面から地中に浸透させる施設。 ○浸透側溝 ・底面と側面に透水性または有孔のコンクリート材を用いた側溝の周りを砕石で充填し地中に浸透させる施設。 ○雨水浸透施設の課題 ・雨水浸透効果の把握が困難 ・個々の浸透能力のばらつき ・目詰まりによる浸透能力の低下 ※参考資料『高堂彰二(2012)トコトンやさしい下水道の本 日刊工業新聞社』
●雨水の貯留施設 ・調整池内に、広場や公園、テニスコートなどを作る複合利用。 ・建物の地下部分、駐車場や公園の地下に設置。 ・治水機能だけでなく調整池の水環境を生かし、魚類や水生昆虫、植物など生態系保全の環境教育の場や親水化した憩いの公園としても利用。 ●地中への雨水浸透施設 ○雨水浸透施設の必要性 ・造成された土地に降った雨の流出量は、山林や草地と比べて2~3倍に増えて、その多くが、河川や下水道により下流に向けて速やかに流れていく。 ・下流の住民は、上流域の開発による増水で洪水の危険にさらされる。 ・この対策のため、新たな開発地には増加した雨水の流出を抑制するため、雨水貯留施設や雨水浸透施設を設置する。 ○主な浸透施設 ・浸透側溝 ・浸透枡 枡内に流入した雨水を底部から地中に浸透させる。 ・浸透トレンチ ・浸透性舗装 空隙率の高いアスファルトコンクリートを表層に使う。 ・空隙貯留浸透槽 ○浸透施設の効果 ・下流下水管渠(かんきょ)の管径を縮小できる。 ・調整池の容量が減少し、公園など複合利用している場合は、冠水頻度が減る。 ・地下水涵養により、湧水や地下水位の回復が期待できる。 ※参考資料『長澤靖之(2012)上下水道が一番わかる 技術評論社』
下水処理場の主な施設
○沈砂池 ・大きなゴミ、小石や砂を取り除く。 ・これにより、ポンプ等の磨耗やつまりを防ぐ。 ○最初沈殿池 ・下水がこの池をゆっくり流れていき、大きな汚れは底に沈んでいく。 ・沈殿した泥は腐敗しやすいので、汚泥かき寄せ機でかき寄せ、速やかに除去する。 ○反応タンク ・反応タンクの中で下水に活性汚泥(バクテリアや原生動物のような微生物の集まりの泥)を混ぜて空気を吹き込むと、活性汚泥は酸素の助けを借りて、下水に含まれている有機物を酸化し、無機物に変えていく。 ○最終沈殿池 ・反応タンクの中で出来た泥のかたまりを沈殿させ、上澄み水と汚泥とに分離。 ・沈殿した泥は腐敗しやすいので、汚泥かき寄せ機でかき寄せ、速やかに除去する。 ○消毒設備 ・最終沈殿池からの上澄み水には、大腸菌などが含まれているので、ここで消毒する。 ・消毒には、塩素剤、紫外線、オゾンを用いている。 ○汚泥処理施設 ・沈殿池から引き抜かれた汚泥は、脱水・焼却などの処理をされ、処分、リサイクルされる。 ・ガス化して発電等の燃料として使用したり、発酵させて肥料にするなど、資源・エネルギーとして再利用されている。 ※参考資料『高堂彰二(2012)トコトンやさしい下水道の本 日刊工業新聞社』
下水の段階処理の概要
一次処理、二次処理、高度処理 ・一次処理とは、物理的・機械的な方法で下水から固形物(汚泥)を除去する処理。 ・二次処理とは、微生物によって下水中に含まれる有機物と浮遊固形物を除去する処理。 ・高度処理とは、有機物と浮遊固形物の除去性能をさらに向上させ、もしくはこれらの除去と同時に窒素やリンなどの栄養塩を除去する処理。 ※参考サイト 下水処理 - 環境技術解説|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア
1)1次処理(物理学的処理) ○スクリーン ・比較的大きなゴミをスクリーン(格子状の柵)で取り除く ○沈砂槽 ・下水を静かに流し、比重が大きい砂や懸濁物を沈殿させる。 2)2次処理(生物学的処理) ○活性汚泥槽 ・活性汚泥と沈殿池からの上澄み水とが混合され、有機物の分解が行われる。 ○沈殿池 ・汚泥は沈殿し、上澄み水は塩素等により消毒され放流される。 ※活性汚泥法 ・活性汚泥という細菌類や原生動物(ゾウリムシやツリガネムシなど)が大量に生息している褐色の泥を活用した下水を浄化する技術。 ・汚水と活性汚泥は、多量な空気を吹き込み攪拌する。活性汚泥に付着し浄化に働く微生物は好気性なので、有機物の分解時に酸素が必要になる。 3)3次処理 ・放流先の水域で、BODの値が20ppm以下や窒素やリンの規制をしている場合は、脱窒素装置、凝集沈殿法、砂濾過、活性炭吸着装置などの高度処理施設が必要になる。 ○汚泥処理 ・増加した汚泥は、処理系統から除かれ汚泥濃縮槽に送られ、含水率を下げ、容積を減らす。 ・濃縮された汚泥は、次の汚泥処理工程に送るため汚泥貯留槽に一時的に貯留する。 ○汚泥の再利用 ・発生した汚泥は約8割リサイクルされている。 ・リサイクルの内訳は、建設資材利用が約6割、緑農地が約15%となっている。 ※参考資料『長澤靖之(2012)上下水道が一番わかる 技術評論社』
下水の高度処理(三次処理)
・近年、湖沼や湾等の閉鎖性水域における富栄養化防止のため、そのような水域に処理水を放流する下水処理場では、高度処理が進められている。 ・平成17年度末の時点で、高度処理人口普及率は14.0%であるが、さらなる普及拡大が目指されている。 ・高度処理水は、水洗トイレ用水、親水公園のせせらぎ用水、融雪用水、電車の洗浄などに再利用可能であり、近年、水資源有効利用の観点から普及が進んでいる。 ※参考サイト 下水処理 - 環境技術解説|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア
・一次処理や二次処理で十分除去できない分解性の悪い有機物や窒素・リンなどを除去する方法。 1)窒素除去 ・生物学的窒素除去法とは、ある種の細菌(脱窒細菌)が水中に酸素がない場合に代わりに硝酸を使って呼吸するが、この呼吸により硝酸は窒素に還元され、水中の有機物を分解させる方法。 ○硝化液循環式硝化脱窒法 ・硝化液循環方式は、無酸素槽と好気槽の順に処理槽を配置し、好気槽から硝化液を無酸素槽に循環させる方式。 ・無酸素槽では、脱窒細菌の働きで循環液中硝酸塩が流入下水中の有機物を用いて脱窒される。 ・好気槽では、アンモニアが硝化細菌の働きで硝酸もしくは亜硝酸に酸化される。 2)リン除去 ○嫌気好気活性汚泥法 ・ポリリン酸蓄積細菌を利用した処理方式。 ・嫌気条件でリンを放出し、好気条件でリンを過剰に細胞内に取り込む作用を利用して、汚泥にリンを蓄積して除去する。 ○凝集剤添加活性汚泥法 ・エアレーションタンクにPACやポリ鉄などの凝集剤を添加してリン酸塩を凝集させ、活性汚泥と共に余剰汚泥として引き抜く方式。 ○嫌気無酸素好気法(A2O法) ・窒素とリンの両方を除去する。 ・嫌気好気活性汚泥法に硝化液循環を加える。 ※参考資料『高堂彰二(2012)トコトンやさしい下水道の本 日刊工業新聞社』
汚泥処理
・処理した後の汚泥の埋め立て処分や再利用をしやすくすることが目的。 ・汚泥に含まれている腐敗しやすい有機物を腐敗しにくい有機物や無機物にしたり、汚泥の容積を減らすために、含まれている水分を脱水したり、焼却するなどの処理をする。 ○濃縮 ・重力濃縮 汚泥の重力のみで自然に濃縮を行う ・遠心濃縮 遠心力を利用して濃縮 ・浮上濃縮 加圧水を添加して行う ○消化 ・微生物を利用して有機物を分解・安定化させる。 ・嫌気性は好気性に比べて分解速度が遅く、臭気が発生する。 ・好気性の分解を行うにはエアレーションが必要であり、エネルギーの消費が大きくなる。 ・嫌気性消化は、汚泥の有機物をメタンに発酵させることにより、汚泥を安定化、無害化、減量化するとともに、メタンガスとしてエネルギーを回収する。 ○脱水 ・天日乾燥と機械脱水がある。 ○乾燥 ・熱風による方法と熱交換器の伝熱面から熱を伝える方法がある。 ○焼却 ・汚泥ケーキに過剰な空気を供給して燃焼させる方法。 ・燃焼させることで、有機物は分解され、無機物だけになる。 ○溶融 ・汚泥や焼却灰を高温で燃焼溶融させ、冷却してスラグ化する。 ※参考資料『高堂彰二(2012)トコトンやさしい下水道の本 日刊工業新聞社』
好気性生物処理法:浮遊生物法
1)標準活性汚泥法 ・下水中の有機物を活性汚泥により酸化分解するためのエアレーションタンク(曝気槽)と、活性汚泥を重力分離するための沈殿池とを組み合わせたプロセスが基本となる。 ・エアレーションタンクでは、下水と活性汚泥の混合が行われ、浮遊固形物の吸着と溶存有機物の微生物体内への吸収により、下水中の有機物が活性汚泥中に取り込まれる。 そして、曝気によって供給される溶存酸素を利用して、取り込んだ有機物の酸化と微生物の増殖が起きる。 ・活性汚泥は微生物が生産する高分子によって凝集し、最終沈殿池における重力沈降によって清澄な上澄みの処理水と分離される。 ・最終沈殿池に沈降した汚泥は、エアレーションタンク中の活性汚泥濃度を一定に保つためにエアレーションタンク内に返送され、残りは余剰汚泥として系外に排出される。 2)長時間エアレーション法 ・エアレーションタンク内での滞留時間を16~24時間と長く設定することにより、活性汚泥の自己酸化を促進させ、結果的に余剰な活性汚泥の発生を減少させることを目的とした方法。 ・維持管理の手間が少ないため、小規模下水処理場に適用される。 3)オキシデーションディッチ法 ・周回水路に下水を注入し、機械攪拌で循環させながら好気的に処理する方法で、通常、最初沈殿池は設置しない。 ・流入下水の量・質の変動に影響を受けにくく、維持管理が容易である反面、広い敷地が必要であることから地方都市等の規模の小さな処理施設での採用が多い。 4)回分式活性汚泥法(SBR) ・エアレーションタンクと最終沈殿池の機能を1つの反応槽に集約したもので、活性汚泥の入った反応槽に下水を流入し、①曝気、②沈降分離、③上澄み処理水の排水、④沈殿汚泥の排汚泥を順次行う。 ・流入下水の質や量の変動に対応して反応時間を自由に設定できるのが特徴。 ・曝気・停止を繰り返すという処理プロセスに対応して、目詰まりのない水中曝気装置や、沈殿汚泥を巻き上げない上澄水排出装置が開発されている。 ※参考サイト 下水処理 - 環境技術解説|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア
好気性生物処理法:生物膜法
・生物膜法では、活性汚泥法と異なり、汚泥微生物が反応槽内に保持されるため、汚泥返送が不要であるほか、自己酸化の促進によって系外に排出される汚泥が少ない等のメリットがある。 ・生物膜処理には、好気性濾床法、回転円板法、及び接触酸化法などの好気性処理と嫌気性濾床法などの嫌気性処理とがある。 1)好気性濾床(ろしょう)法 ・生物膜法の中で最も一般的。主に小規模下水処理場に適用が進んでいる。 ・粒状濾材を充填した濾床に槽上部から下水を流入させ、槽下部から処理水を得る。 ・濾過によって下水中のSS(浮遊物質)を除去できるほか、濾材に付着した微生物によって溶存有機物の生物処理が行われる。 ・SSの流出が少ないため、最終沈殿池は不要だが、微生物の増殖等による充填槽内の閉塞を回避するため、一定間隔での逆洗が必要となる。 ・反応タンクの水質管理が不要なため維持管理が容易であるほか、反応時間が短いこと等が特徴。 2)散水濾床法 ・最も古典的な生物膜処理装置。近年では新設はほとんどない。 ・反応タンク内の充填材の上部から排水を散水することにより、充填材表面の微生物に、基質と酸素を供給して処理する手法。 ・濾床に自生する微生物群は幅広い生物相から構成されるため、汚泥発生量は少ないが、ハエや臭気の発生に留意が必要。 3)回転生物接触法 ・欧州を中心に普及している技術。日本では合併浄化槽、廃棄物埋立処分場の浸出水処理施設、各種産業排水処理施設の分野を中心に採用されている。 ・回転する円板に生物膜を付着させるもので、生物膜は微生物の増殖によって肥大化し、微生物に寿命が来ると、生物相が変わり、剥離・更新される。 ・大気中で酸素を取り込み、液中では回転による攪拌力で基質や酸素の拡散を容易にして生物学的な浄化を進行する。 4)接触酸化法 ・充填材を水槽内に沈めて、散気装置により充填材表面の微生物に酸素を供給して処理する。 ・円筒系の水槽が二重筒状に仕切られている構造が代表的で、内筒部に原水流入口と空気挿入口、外筒部にハニカムチューブである担体が充填されている。 ※参考サイト 下水処理 - 環境技術解説|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア
固液分離法:膜分離活性汚泥法(MBR)
・最も一般的な下水処理方法は活性汚泥法であるが、活性汚泥法では汚泥と処理水との固液分離を重力沈降によって行う。 この固液分離プロセスを精密ろ過膜(MF膜)や限外ろ過膜(UF膜)を用いた膜分離プロセスに置き換えたものが膜分離活性汚泥法(MBR)である。 ・沈殿処理に膜分離処理を加えることで、 ①高濃度の活性汚泥が分離できるため、エアレーションタンクの活性汚泥濃度を高めて自己消化(活性汚泥微生物の死滅および分解)を促進させることで余剰汚泥の発生量を低減できる、 ②SS由来のBODやCODも除去できるため、処理水質が良好、 ③確実な固液分離ができるため、バルキング(沈殿槽の汚泥の単位乾燥重量当たりの水分が多くなったり、糸状性細菌が増加することで沈殿しにくくなる現象)の心配がなく運転管理が容易である、 等のメリットがある。 ・近年、MBRは世界市場で適用事例が増えており、下水再生水の利用目的でも活用されている。 ※参考サイト 下水処理 - 環境技術解説|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア
嫌気性下水処理技術
・日本の下水処理は活性汚泥法を中心とする好気性生物処理が主流だが、活性汚泥法では余剰汚泥の処理が課題となっており、余剰汚泥が少ない嫌気性処理による代替が研究されている。 現在、嫌気性下水処理技術は、食品工場排水のような高いCOD濃度(数千mg/l、一般的な下水流入水は200mg/l程度)を持つ排水に対して適用されている。 ※参考サイト 下水処理 - 環境技術解説|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア
酸化池・ラグーン
・酸性池・ラグーン(安定池)とは、素掘りの池に下水、下水二次処理水等を貯めて、自然界に存在する様々な浄化作用(微生物による分解、植物による栄養塩の取り込みなど)を活用して浄化する施設。 ・広大な敷地面積を必要とする一方、建設費、維持管理費が他方式に比べて圧倒的に安価。 ・日本では適用例がほとんどないが、広大な面積を有するアメリカや、アジア圏の小規模自治体で一般的な手法。 なお、ラグーンは、生物処理の形態によって、好気性、嫌気性、好気性-嫌気性に分けられる。 ※参考サイト 下水処理 - 環境技術解説|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア
富栄養化化学物質への対応
・東京湾や瀬戸内海、琵琶湖のような閉鎖性水域では、河川から流入する窒素およびリンが、富栄養化をもたらす主な原因のひとつとして問題となっている。 富栄養化が急速に進むことで植物性プランクトンが増殖し、赤潮やアオコなどにより漁業への被害や水質・景観の悪化など問題が起こっている。 標準活性汚泥法では窒素およびリンの除去は難しいため、法的規制と併せて下水処理施設の高度化により対応している。 ※富栄養化対策については以下の記事参照。 富栄養化対策の概要 ※参考サイト 下水処理 - 環境技術解説|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア