環境保護の情報メモ

集約放牧の概要

集約放牧についての情報をメモ書きしています。
※参考資料
集約放牧導入マニュアル | 農研機構

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  1. 集約放牧の概要
  2. 放牧草地における施肥
  3. 集約放牧の放牧草の栄養価
  4. 放牧牛乳の特徴
集約放牧の概要

●集約放牧とは?
 
・草地を区画に分けて順番に放牧することにより草地の利用と回復を繰り返し、牛に効果的に栄養価の高い牧草を採食させる放牧方式。
・北海道を中心に行われている。
・牛の飼養管理時間の低減や飼料生産の省力化を図ることにより飼料生産・家畜管理に係るコストを大幅に低減する。
・牛が健康になり繁殖能力の向上も期待できる。
 
●海外からの輸入濃厚飼料依存の問題点
 
・飼料自給率の低下
・乳牛の平均産児数の低下
・家畜糞尿による環境負荷の顕在化
・飼養管理労働時間の延長によるゆとりの減少(貯蔵粗飼料の調整・給与、糞出し、敷料管理などに要する時間、労力)
・家族経営を核とする中規模酪農家の離農
 
●従来の放牧に対する懸念
 
・牛の精密な栄養管理や多頭飼育が困難
・牛の脱柵
 
●集約放牧が注目される背景
 
・栄養価の高い牧草を利用し、1日ごとに輪換放牧をする生産性の高い集約放牧技術が開発。
・電気牧柵の技術進歩
・家畜福祉に合う
・濃厚飼料価格の上昇基調
・土-草-家畜を軸とした循環型酪農であり、飼料の自給率を高め、低コスト生産が可能。(集約放牧草はサイレージの原料草よりも栄養価が高く、収穫・給与ロスがない)
 
●集約放牧の考え方
 
①高栄養草種の利用
 
・高栄養価の牧草を食い込ますことによって、単位面積当たりの牧草生産性と乳産性が向上する。
・栄養価・家畜の嗜好性・再生力に優れた草種を用いる。
 
②短草利用
 
・短い草丈で放牧利用した高栄養草のTDN(可消化養分総量)含量は放牧期間を通じて70%以上を期待でき、その変動幅も小さくなる。
・短草利用には分げつを促進するとともに、群落下部まで太陽光を届きやすくし、牧草密度を向上させる効果もある。
・一方、伸びすぎたときや倒伏した場合は、嗜好性や栄養価が低下するばかりでなく、植生が悪化する原因ともなる。
 
③頻回転牧と草量の過不足への対応
 
・一つの牧区に牛が滞在する期間(滞牧日数)を半日~数日とすることにより、採食性の向上と牧区内での草量ムラの発生を防止する。
・牧草再生量は春に高く、夏以降に低下するので、秋の放牧依存度をどの程度にするかで必要となる放牧地面積が変わってくる。
 秋に必要な面積を確保できている場合は春に牧草が余るため、一部の牧区には放牧せず、採草利用する。(採草しないと次の放牧時に草が伸びすぎる)
 逆に秋に不足する場合は、牧草再生量に応じて1日の放牧時間を短くしたり、補助飼料給与量を増やすようにする。
 
④電気牧柵の利用
 
・細かい牧区の設定や草地内での機械作業を効率的に行うに必須。
・設置と撤去が容易
 
⑤通路と飲水場の整備
 
・放牧牛が自由に水を飲めるようにする。
・通路のぬかるみ防止を図り、牛や人の移動を円滑にする。
 
⑥その他
 
・土壌診断に基づく過不足のない草地への施肥。
・放牧草の成分に応じた補助飼料の設計
・乳質のモニタリング

放牧草地における施肥

・放牧草地では、牛が草を食べ、糞尿を排泄する。
 食べられた養分の一部は家畜の維持・生産に使われ、排泄された養分の一部は形態変化や損失によって牧草に利用されにくい状態になるので、放牧を続けると肥料として有効な養分(肥料換算養分)が草地から減少する。
 この減少分を施肥で補う必要がある。
 
・肥料換算養分の減少量は、地域、草種、土壌の違いによらず、牛が食べた草の量によって決まる。
 
・マメ科牧草の多い草地では、根粒菌の窒素固定によって、窒素施肥量が少なくてすむ。
 
・リン酸は土壌に強く吸着されるので、養分の減少量より多めにする。
 
・定期的に土壌診断を行って施肥量を調節する。

集約放牧の放牧草の栄養価

●全般
 
・集約放牧では、20~30cm程度の短い草丈で草地を管理利用するが、短い草丈の牧草は高たんぱく質でミネラルやビタミンも豊富に含んでいる。
 
・牛は、放牧時には水分含量が高い生草をそのまま摂取することになるが、サイレージや乾草と比べ、乾物1kgあたりを摂取するのに2倍以上の時間を要する。
 また、放牧牛は舎飼牛に比べ、草を摂取するための採食時間が長く、内容液が第一胃を速く通過し、内容量が少ない特徴がある。
 
・泌乳牛では摂取飼料の栄養成分の変化が、すぐ乳量や乳成分に影響するので飼養管理が必要。
 
●たんぱく質含量
 
・草丈30cm以下で草地を利用している場合、たんぱく質含量は春先に約30%あるが、6月中旬に約20%まで直線的に低下した後、夏から秋にかけて上昇して、9月以降に減少するといったパターンを示す。
 
・たんぱく質を圃場から得るためには、雑草の少ない均一な草地管理が重要。
 
・良好な管理をされている放牧草はたんぱく質含量がいずれの季節も20%以上となり、集約放牧搾乳牛にとって、不足よりも過剰摂取が心配される栄養成分。
 
●たんぱく質の利用性
 
・放牧草の粗たんぱく質成分は、第一胃内での分解性が高く、体内に吸収されやすい。
 
●エネルギー価(可消化養分総量:TDN)とTDN/CP比(CP:たんぱく質)
 
・TDN含量は、5月頃は80%と高いが、季節が進むにつれて低下し、7月後半から9月初旬には70%以下となり、その後涼しくなると75%程度まで回復するというパターンを示す。
 
・TDN/CP比は、5月に低く、6、7月に高く、真夏から初夏に低く、その後、上昇するパターンを示す。7月後半~9月初旬は3以下。
 貯蔵飼料よりも低い。
 給与する飼料のTDN/CP比が4以下になると、乳たんぱく質生産に対する摂取たんぱく質の利用効率が低下し、乳中尿素態窒素(MUN)も基準値を超えることが報告されている。

放牧牛乳の特徴

●エサとしての放牧草の特徴
 
・放牧草は、葉部割合が大きく、収穫や貯蔵等に伴う損失がないため、牧草サイレージや乾草などの貯蔵粗飼料や濃厚飼料と比較して、ビタミンEとβ-カロテンの含量が際立って高い。
 
・CLA(共役リノール酸)の原料となる多価不飽和脂肪酸(リノール酸、α-リノレン酸)が上記と同じ理由で牧草サイレージの約3倍含まれる。
 
●飼料と乳成分率
 
・放牧草の利用は、無脂固形分率や乳たんぱく質などの乳成分率に大きく影響することはない。
 
・放牧草は牧草サイレージの約3倍の多価不飽和脂肪酸を含むため、乳腺の脂肪合成機能に影響を与え、乳脂肪を低下させる。
 
●飼料とビタミン、脂肪酸
 
・乳牛はビタミンA、β-カロテン、ビタミンEを完全に飼料に依存しているため、牛乳中のβ-カロテンやビタミンEの濃度は飼料からの供給量に影響される。
 放牧牛乳はビタミンEとβ-カロテンが多い。
 
・乳脂肪中の脂肪酸組成も飼料の影響を受けやすい。CLA(共役リノール酸)は飼料の影響を強く受ける。
 放牧牛乳はCLAが多い。
 
※CLA(共役リノール酸)
共役結合を持つリノール酸の総称。乳製品・牛肉に含まれるCLAは、動物実験で抗がん作用、免疫調節機能が報告されている。

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