環境保護の情報メモ

ウシの飼料の種類と特徴

ウシの飼料の種類と特徴についてメモ書きしています。

※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。
  1. 繊維質飼料
  2. デンプン質飼料
  3. 高脂肪飼料
  4. ビタミンA
  5. 肥育、育成と飼料
繊維質飼料

・反芻胃内発酵を正常範囲で安定させるためには、粗飼料(牧乾草やサイレージなど)に代表される繊維質飼料一定以上の割合で給与する必要がある。
 
・繊維質飼料には以下の役割がある。
①唾液の分泌を促進して反芻胃内のpHを安定させる。
②第一胃(ルーメン)内にマット状のかたまり(ルーメンマット)を形成することで、飼料の消化・発酵および産生されたVFAの吸収を十分に行うための時間的・空間的な場を確保する
 
・デンプン質飼料の多給あるいは繊維質飼料の減少は、反芻胃内のプロピオン酸を増加させて低乳脂を引き起こすとされている。
 プロピオン酸は、吸収後は糖新生の材料となることから、その増加は血糖値の上昇によるインシュリンの分泌を促す。
 インシュリンは、脂肪細胞への脂肪取り込みを促進し、かつ脂肪細胞からの脂肪酸放出を抑制することで、血中の脂肪酸濃度を低下させる。そのため乳腺で牛乳中に取り込む脂肪酸の利用可能量が低下して、低乳脂になる。
 
・乳牛では低乳脂の発生や代謝疾病のリスクを回避するために比較的高い飼料中繊維水準が求められているが、肉用牛では急性アシドーシスの発症さえ注意すれば、さらに繊維水準を低くすることが可能。
 
※参考資料『広岡博之(2013)ウシの科学 朝倉書店』

デンプン質飼料

・デンプン質飼料には各種穀類のほか、精白度の高い米ぬかやフスマ、バン屑や菓子粕のような食品副産物が挙げられ、その給与は多量のエネルギー成分を供給する反面、過度の多給は急激な反芻胃内発酵によるルーメンアシドーシスを引き起こす。
 
・デンプン質飼料は、デンプン成分の可溶性や消化速度(分解・発酵速度)にも影響を与える。
 主要な穀類間では、小麦>大麦>トウモコロシの順に高い反芻胃内分解速度を示す。
 デンプンの反芻胃内分解性が高まると有効なエネルギー価および反芻胃微生物由来の代謝タンパク質が増加して乳量の増加が期待されるが、同時に反芻胃内A/P比(酢酸/プロピオン酸)の低下による低乳脂発生のリスクも高まる。
 さらに急激な反芻胃内発酵によるpHの低下は、セルロース分解菌の増殖を抑制し、飼料中繊維消化性の低下から乾物摂取量の減少をもたらすことも知られている。
 
※参考資料『広岡博之(2013)ウシの科学 朝倉書店』

高脂肪飼料

・脂肪は糖類の2倍以上のエネルギーを含むことから、高能力牛に対するエネルギー補給の役割を期待できる。
 しかし脂肪は、微生物の細胞膜に侵入して脱共役作用を示すことで外膜をもたないグラム陽性菌の増殖を阻害し、特に二重結合を持つ不飽和脂肪酸やラウリン酸、ミリスチン酸といった中鎖脂肪酸にその阻害効果が高いことが知られている。
 そのため、脂肪の多給はルーメン微生物への阻害を通して繊維消化率の低下や、低乳脂の発生をもたらすとされ、飼料中に粗脂肪として5%以下に抑えることが推奨されてきた。
 その後、反芻胃微生物に対する影響を弱めた脂肪、いわゆるバイパス脂肪が利用されるようになってウシ用飼料に対する脂肪の添加量が増加した。
 
・バイパス脂肪には脂肪酸カルシウム、油実などがあげられる。
 近年、ビール粕や豆腐粕、バイオエタノール粕(DDGS)等の脂肪含量の高い副産物飼料の有効利用が図られている。
 
・油脂の給与は乳脂率低下をもたらすことが知られている。
 これは脂肪酸がプロトゾアやメタン細菌の増殖を阻害することでプロピオン酸の濃度が高まることが原因の一つと考えられる。
 さらに、反芻胃内での不飽和脂肪酸の代謝によってトランス脂肪酸が産生され、そのうちのいくつかが乳腺での脂肪合成を強力に阻害することが明らかになってきた。
 脂肪の給与により乳腺で脂肪酸合成が阻害され、牛乳中のC4~C14の脂肪酸産生量は低下するが、吸収された脂肪が乳腺に取り込まれて乳中に分泌されるため、C18以上の乳脂肪酸産生量は高まる場合が多い。
 脂肪酸合成の阻害量と飼料由来の取り込み量のバランスの傾きは、脂肪の種類と形態に左右される。
 
・牛乳中の共役リノール酸(CLA)はリノール酸やリノレン酸を多く含む脂肪の給与や放牧によって増加することが報告されている。
 CLAには肥満防止、コレステロール低下作用、特にルーメン酸は、抗がん作用や免疫賦活作用を示すことで注目されている。
 
※参考資料『広岡博之(2013)ウシの科学 朝倉書店』

ビタミンA

・肥育牛へビタミンAを低減すると、筋肉内脂肪が増加することが認められ、国内では肥育牛に対して広くビタミンA給与制限が行われている。
 一方、それにより強度のビタミンA欠乏に陥り、増体抑制、夜盲症や筋肉水腫が発生するという問題が起きている。
 
・繁殖牛ではビタミンA欠乏により繁殖能力が低下する。
 
・ビタミンAは上皮組織の健全性にも必要であり、その欠乏は尿路上皮の剥離を増加させ、これが尿石形成時の核となるため、尿石症の一因にもなるとされている。
 
※参考資料『広岡博之(2013)ウシの科学 朝倉書店』

※以下の記事も参照。
牛肉のおいしさ評価、改良の”改良の取り組み”
和牛子牛の哺乳・育成の概要の”妊娠中の母牛の管理”

肥育、育成と飼料

●肉用牛の育成
 
・初期において子牛は乳のみで育つが、哺育期(~6ヶ月齢)の途中(1~3ヶ月齢)からは、十分な栄養を与え、また反芻胃をうまく発達させ、離乳やその後の肥育準備とするため粗飼料や濃厚飼料といった別飼飼料を併用する必要がある。
 
●黒毛和種の肥育
 
・脂肪交雑(サシ)に影響を与えるビタミンAのコントロールのため稲わらなどの青色の少ない粗飼料を給与し、さらにトウモロコシや麦などの穀類や植物製造粕類などからなる濃厚飼料を多給するのが一般的。
 
※参考資料『広岡博之(2013)ウシの科学 朝倉書店』

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