放牧、工場式畜産の食品の品質、牧草地の管理

放牧、工場式畜産の食品の品質、牧草地の管理に関する情報をメモ書きしています。

※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。

  1. 過放牧、牧草地の管理
  2. 放牧の家畜の食品の品質
  3. 工場式畜産の食品の品質
過放牧、牧草地の管理

※放牧については以下の記事も参照。
放牧の効果と課題
集約放牧の概要

●牧草の生長曲線
 
①放牧によって草が食べられる
②はじめはゆっくり生長。
③数日後、ぐんと早まる。
草が最初の菜食から回復して、蓄えと根をつくり直して、急速に伸びる。
④14日目ぐらいに生長が遅くなり生長曲線が平らになる。
花が咲き種をつくる準備段階。木質化という、牛にとっては好ましくない、植物老化の時期に入る。
 
上記③から④になった時点で放牧をする。
 
●過放牧
 
上記④になるまで待たずに放牧すると(過放牧)、はげた地や牛が食べない雑草ばかり残ってしまう。
 過放牧のせいで短いままになった牧草には、水やミネラルを下層土から吸収する深い根がなく、時間とともに荒れ果て、乾燥した環境では最終的に砂漠になってしまう。
 
●過小な放牧
 
・草が木質化した老化期に入り、生産性が失われる。
 
●養鶏
 
・鶏を一つの場所でそのまま好きなようにさせておくと、鶏は草の根までつつき、窒素度の極端に高い鶏糞で土を荒らしてしまう。
 ふつうの平飼い鶏用の庭が、すぐに枯れ、土がレンガのように固くなるのはこのため。
 鶏舎の場所を移動すると、鶏は病原体から逃れることができ、様々な草を食べるので鶏も健康に保てる。
 
※参考資料『マイケル・ポーラン(2009) 雑食動物のジレンマ 東洋経済新報社』

 

・牧草地の管理が行き届いていないと、過放牧、家畜密度の過剰化、土壌の侵食につながり、土壌に蓄えられた炭素が大気中に放出される
 
※参考資料『エリック・シュローサー(2010)フード・インク 武田ランダムハウスジャパン』

放牧の家畜の食品の品質

●牧草育ちの動物の食品
 
・牧草は、鶏や卵、牛肉や牛乳の栄養価を大きく変えるという研究報告が増えている。
 
・牧草に含まれているベータカロチン、ビタミンE、葉酸は、牧草を食べる動物の肉に入る。
 卵のカロチノイドが増え、卵黄がニンジン色になる。肉の脂肪分が穀物を飼料とした場合より低い。
 
・牧草育ちの肉の脂肪は、飽和脂肪酸が少なく、不飽和脂肪酸などの質が優れている。
 牧草育ちの肉、卵、牛乳はオメガ3脂肪酸の含有量が高い。
 養殖のサケも穀物飼料を与えられていると野性のサケと比べてオメガ3脂肪酸が少なくなる。
 サケは牛肉より体に良いとされているが、それは牛が穀物、サケはオキアミを食べるという前提にたっているが、牛が牧草、サケが穀物で育った場合は、牛のほうが健康に良い、ということになるかもしれない。
 
・狩猟採集時代の遺伝子を受け継いでいるので、野生動物に近い食生活を送っている牧草育ちの動物の肉の方が人間の体に良い可能性がある。
 
●オメガ6、オメガ3、飽和脂肪酸
 
・オメガ6はオメガ3の4倍までが推奨。
飽和脂肪酸のとりすぎは、高コレステロール症や心疾患につながる。
 
・集約的な工場式農場ではなく、幸福度が高い環境で飼育された動物の肉は栄養価が高い。牛、豚、鶏、牛乳でオメガ3を多く含む
 
●抗酸化物質
 
・放し飼いの鶏の卵は、ビタミンE、ベータカロテンの量が多い。
・放牧された豚肉はビタミンEを多く含む。
・幸福度が高い牛の牛乳はベータカロテンを多く含む。
 
※参考資料『マイケル・ポーラン(2009) 雑食動物のジレンマ 東洋経済新報社』

 

●牛肉、牛乳
 
・完全に牧草地だけで飼育された牛(草しか食べなかった牛)から作られる牛肉や牛乳は、心臓病を予防し免疫系を強化する可能性がある、オメガ3脂肪酸などの有益な脂肪のレベルがより高い。
 
・牧草育ちの牛の肉は、肥育場で飼育された牛の肉に比べると脂肪の総量が少ない。
 
※参考資料『エリック・シュローサー(2010)フード・インク 武田ランダムハウスジャパン』

 

●良い食生活で育った動物を食べる
 
・穀物を食べても問題のない家畜の場合も、緑の牧草を食べた方がその肉や卵にはオメガ6脂肪酸が少なく、体に良いオメガ3脂肪酸やビタミン、抗酸化物質が多く含まれている。
 
※参考情報『マイケル・ポーラン(2010)フード・ルール 東洋経済新報社』

工場式畜産の食品の品質

●牛
 
・最も上質な肉になるのは、自由に動き回れる環境で、好きなように高木や潅木の葉や草を食べて育った動物。畜産用に改良された牧草ばかり食べさせると肉の品質は落ちる。
 
・悪玉脂肪(飽和脂肪酸)と善玉脂肪(オメガ3、オメガ6)の比率が、農場で育った動物は50対1だったが、野生種は多くても3対1で、悪玉脂肪の量がはるかに少なかった。
 穀物にはオメガ3があまり含まれていない。
 新鮮な飼葉(放牧された家畜が食べる生の草や葉)には、α-リノレン酸(オメガ3脂肪酸の重要な構成要素の一つ)が、穀物の10倍から12倍も多く含まれる。
 
・工場式農場で育てられる動物は肥満しやすいように品種改良されている。
 
●鶏
 
・1970年代の標準的な鶏肉に比べて、脂肪が3倍近く多く、たんぱく質は3分の1しかない。
・現代の肉用鶏は、DHAが野鶏の5分の1しか含まれてない。
・伝統的飼育方法では、鶏は活発に運動し、植物や種子を食べていたが、集団的に飼育された現代の鶏は、高カロリーの餌を与えられ、ほとんど動けないので、たんぱく質が豊富な肉ではなく、脂肪をたっぷり含む。餌に穀物を与えられているのも一因。
 
●トウモロコシ飼料と牧草
 
・トウモロコシはカロリーが高く、牧草より早く肉を生産できる。
・最後まで牧草で育てられた牛の肉に特徴的な、季節や地域による違いも排除し、より安定した製品をつくれる。
・トウモロコシでうまく育つような牛は、通常より体が大きいため、必要なエネルギーを草から摂取するのは難しくなった。
 ホルスタインに必要な飼料の量はあまりにも多いため、牧草だけで育てるのは困難。
 
※参考資料『マイケル・ポーラン(2009) 雑食動物のジレンマ 東洋経済新報社』

 

●乳牛は牧草のほかに何を与えられる?
 
・栄養補助食品(動物性脂肪や動物性タンパク質が含まれている)、セメントの粉末、腐った食べ物や期限切れの食べ物、家禽の寝わら、動物の副産物など。
・飼料に大量のトウモロコシを使うと、乳牛は病気になる可能性がある。
 
※参考資料『エリック・シュローサー(2010)フード・インク 武田ランダムハウスジャパン』

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください