ウシの繁殖技術の概要

ウシの繁殖技術の概要についてメモ書きしています。

※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。

  1. ウシの繁殖の特徴
  2. 人工授精技術
  3. 受精卵移植技術
  4. クローン技術
ウシの繁殖の特徴

・ウシは性成熟に達すると、1発情周期に1~2個の卵子を自然排卵(交尾排卵)する。
・妊娠しない限り平均21日の完全発情周期ごとに発情を繰り返す。
・ピークを過ぎ高齢になるに従い繁殖機能は衰えるが、黒毛和種雌牛は平均7.5歳まで繁殖用に供用されている。
 
※参考資料『広岡博之(2013)ウシの科学 朝倉書店』

人工授精技術

●概要
 
・人工授精とは、発情を示したウシの授精適期に、凍結精液あるいは液状精液をその生殖道内に注入する技術。
 
・現在の飼養雌牛のほぼ100%が凍結精液による受精。
 
・発情の開始から終了までの雌牛の生理的および行動的変化についての理解が必要。
 
・乳牛においてスタンディング発情開始推定時刻から4~12時間以内に人工授精をすれば、最も高い受胎率が得られるという報告がある。
 
・ウシの歩数が発情牛のマウンティング行動と相関することを利用し、歩数をリアルタイムに把握する装置も利用されている。
 
●特徴
 
・農家における雄牛の繋養経費の節減、技術としては非常に単純。
 
・生まれる子の性別は予知不能、優良さも雌の要因が50%関与するので未知数
→精子の性判別技術が実用化に近い。
 
・現在、ホルスタイン雌牛に黒毛和種の凍結精液を人工授精する割合が30%を超える。

受精卵移植技術

●概要
 
・受精卵(胚)を人為的に別の雌牛の生殖道内に注入することによって子牛を生産する技術、胚移植ともいわれる。
 
・性質のすぐれた雌牛にホルモンを投与することで多くの卵子を排卵させ、その状態で人工授精をしてたくさんの受精卵を作る。そして、この受精卵を別の雌牛に移植する。
 
・現在は乳牛の種雄牛の多くは受精卵移植で生産されている。
 
●特徴
 
・受精卵移植技術は雌雄両方からの改良が可能となる。
 しかし、過剰排卵処理を施された雌牛から採取される受精卵の数は1回当たり平均6個に過ぎないので、1回の採精当たり200頭の雌牛への授精分が取れる人工授精に比べて、改良効率は比べものにならないほど低い
 
・受精卵の性別は制御不可。
受精卵の性判別は可能であるが、手間がかかり効率も悪い。
 
・雄牛の能力は後代検定(間接検定)で証明済みだが、雌牛の能力は過剰排卵に対する反応のよいものが選ばれる傾向で、必ずしも遺伝率は高くない。
 
・受精卵の洗浄を行えば、伝染病に罹患している動物からの受精卵から健康な子畜を生産することができる。
 
・現在、ホルスタイン雌牛に黒毛和種の受精卵を移植して子畜を生産する方式が酪農家の副収入源となっている。

クローン技術

●概要
 
・細胞を提供する動物と核内遺伝子構成が同一な個体を作出する技術。
・受精卵由来の割球を用いる"受精卵クローン"と体細胞(培養した線維芽細胞)を用いる"体細胞クローン"がある。
 
●体細胞クローン技術の特徴
 
○長所
・生産効率は非常に高い(理論上、体細胞クローンでは遺伝子構成が同一な動物を無数に作出することが可能)
・優良・希少形質保有動物の複製が可能(細胞提供動物の制限)
・性別が制御できる(細胞提供動物と性は一致する)
 
○短所
・世代更新ができない
・体細胞クローン(受精卵クローンも同様)では、核の初期化が必要
・現在の技術水準では、早期胚死滅、流産、死産、生後直死の発生率が、人工授精、体内受精卵移植、体外受精卵移植、受精卵クローンに比べて有意に高い

 

・クローン技術は、当初、育種分野への応用が期待されたが、クローン技術による家畜の作出効率が非常に低いこと、および特に体細胞クローンでは世代交代できないことから、限定的な利用にとどまっている。
 
・肉用牛育種においては、優良種雄牛の体細胞クローンによる永続的な使用は改良を停滞させ、遺伝的多様性を減少させることから好ましくない。
 
※参考資料『広岡博之(2013)ウシの科学 朝倉書店』

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