ウシの胃の特徴と代謝

ウシの胃の特徴と代謝についてメモ書きしています。

※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。

  1. ウシの胃の特徴
  2. 炭水化物の代謝
  3. 窒素化合物の代謝
  4. 脂質の代謝
ウシの胃の特徴

・4つの胃を持つが、反芻にとっては第一胃(ルーメン)と第二胃が特に重要であり、第四胃はヒトと同じ消化液が出る胃である。
 
・出生時の子牛では、第一~三胃は未発達で微生物さえ存在していないが、粗飼料の摂取とともに物理的、化学的刺激によってそれらの胃は発達し、有用微生物が共生するようになる。
 
・第一胃、第二胃内では原生動物や細菌といった微生物が増殖し(共生)、その微生物によってウシの重要な栄養活動が営まれている。
 
・胃内の微生物は、セルロースやヘミセルロースなどの繊維を分解し、酢酸やプロピオン酸、酪酸などの揮発性脂肪酸(VFA)に変化させる。
 VFAはウシの体内に吸収され、エネルギーや脂肪合成などを担う貴重な栄養源となる。
 さらに胃内微生物は非タンパク質態窒素などの一部をウシが利用可能なタンパク質に変換してくれる。
 また、微生物自体もウシの貴重な栄養源となる。
 ただし、逆に発酵しやすい炭水化物などの栄養物をガスにまで分解してしまうといったマイナス面もある。
 
・木や木質化した草ではリグニンという繊維分が多く、これは胃内微生物でも分解することはできない。
 
※参考資料『広岡博之(2013)ウシの科学 朝倉書店』

炭水化物の代謝

・炭水化物はピルビン酸に代謝され、ピルビン酸から酢酸、プロピオン酸、酪酸などの揮発性脂肪酸(VFA)とメタンや二酸化炭素が産生される。
 
・反芻胃内におけるVFAの産生割合は、給与飼料や微生物叢などによって変動する。
 粗飼料が多い場合の酢酸:プロピオン酸の割合は7:2から6:3だが、濃厚飼料給与時には酢酸の産生が減少し、1:1に近づく。
 
○デンプン減退
・繊維消化は、デンプンなどを多く含む穀類主体の飼料を多く与えると減少する。デンプンはすみやかに発酵され、その結果反芻胃内pHが低下し、繊維分解菌の活性が減少する。
 
○糖新生
・グルコースは様々な物質の前駆物質であり、脳神経系の機能維持、泌乳のための乳糖合成、妊娠時の胎児へのエネルギー供給に必要だが、グルコースの吸収量は多くないと考えられている。
 そのため糖新生という代謝過程により多量のグルコースを生合成している。
 
・糖新生の80~90%は肝臓で行われ、その前駆物質として反芻胃内発酵由来のプロピオン酸、吸収されたアミノ酸や体タンパク質の分解によって生じたアミノ酸、筋肉運動によって生じた乳酸などが用いられている。
 
※参考資料『広岡博之(2013)ウシの科学 朝倉書店』

窒素化合物の代謝

・反芻胃内では、飼料に含まれるタンパク質や、アミン、核酸、尿素、硝酸塩などの非タンパク質態窒素(NPN)が微生物により分解され、アンモニアを介してタンパク質が産生される。
 これら微生物タンパク質と、微生物による分解を免れた飼料中タンパク質(非分解性タンパク質)は、下部消化管に移行し、消化・吸収される。
 これらウシが小腸から吸収し、利用可能なタンパク質を代謝タンパク質とよぶ。
 
・微生物はアミノ酸合成のために、アンモニアとともに炭素骨格を必要とする。したがって、アンモニアが十分供給されている場合は、炭素骨格の供給がアミノ酸合成の制限要因となる。
 
・高泌乳牛は乳中に多量のタンパク質を分泌するので、反芻胃内微生物によるタンパク質産生のみではタンパク質の要求量を満たすことができず、この不足分は非分解性タンパク質で補わねばならない。
 
※参考資料『広岡博之(2013)ウシの科学 朝倉書店』

脂質の代謝

・一般的なウシの飼料には脂質が2~5%含まれており、これらは主としてトリグリセリド、リン脂質であるが、草類にはガラクト脂質も多い。
 
・摂取された脂質は、反芻胃内微生物によって加水分解され、長鎖脂肪酸、グリセロール、ガラクトースなどが産生される。
 グリセロールやガラクトースは反芻胃内発酵によって揮発性脂肪酸(VFA)に代謝されるが、長鎖脂肪酸は反芻胃内ではほとんど吸収されない。
 反芻胃内で生じた長鎖脂肪酸は、飼料粒子や微生物の細胞膜に付着する。長鎖脂肪酸は微生物に対する毒性を有しており、脂肪を多く与えると繊維の消化率が低下する。
 
※参考資料『広岡博之(2013)ウシの科学 朝倉書店』

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