乳牛の飼養管理、改良

乳牛の飼養管理、牛乳の乳成分の管理、改良などの情報をメモ書きしています。

※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。

  1. 高泌乳牛の反芻胃による代謝
  2. 高泌乳牛の飼養管理
  3. 分娩前後の飼養管理
  4. 乳牛の夏季不妊症
  5. 牛乳の乳成分の変動
  6. 乳成分の改善
高泌乳牛の反芻胃による代謝

○繊維質→VFA→乳脂肪、乳糖合成
・ルーメン微生物は、セルロース、ヘミセルロース、ペクチンを分解し、酢酸、プロピオン酸、酪産などの揮発性脂肪酸(VFA)を生産する。
 吸収されたVFAはエネルギー源として使われ、また乳腺で乳脂肪合成のために利用される。
 反芻胃で生産されたプロピオン酸は肝臓で糖新生によってグルコースに変換され、乳糖の合成に使われる。
 
○タンパク質→菌体タンパク質→乳タンパク質
・乳牛が摂取したタンパク質は、アミノ酸やアンモニアまで分解され、ルーメン微生物はそれらを利用して菌体タンパク質を合成する。
 菌体タンパク質は小腸で分解されてアミノ酸になり、小腸から吸収されたアミノ酸が乳腺でガゼインなどの乳タンパク質に変換される。
 
・高泌乳牛は菌体タンパク質だけではタンパク質不足になるため、加熱大豆など、反芻胃内で分解されないタンパク質(バイパスタンパク質)を補給することが欠かせない。
 
○ミネラル、脂溶性ビタミンの摂取
・反芻胃内に生息している微生物はビタミンB群とビタミンCを合成できるが、ビタミンA、D、Eなどの脂溶性ビタミンは合成できない。
 消化管から吸収されたミネラルとビタミンは血液に移行し、乳腺でミネラルとビタミンの供給源として利用されるため、乳牛はミネラルと脂溶性ビタミンを常に摂取しなければならない。
 
※参考資料『広岡博之(2013)ウシの科学 朝倉書店』

高泌乳牛の飼養管理

・牧草などの粗飼料だけではエネルギーなどの要求量を満たすことができないため、濃厚飼料(穀物、大豆粕など)を多量給与している。
 しかし、高泌乳牛では粗飼料が不足すると反芻胃の機能が減退し、体調を壊してしまう。
 
※参考資料『広岡博之(2013)ウシの科学 朝倉書店』

分娩前後の飼養管理

・分娩直後に乳量が急激に増加することによるエネルギー不足を補うため、体内に蓄積している養分を利用して補っているが、その結果体重が急激に減少し、このことが疾病増加や受胎率低下を招いている。
 
○周産期病
・反芻胃や肝臓などの機能低下が原因で生じるが、飼料給与や飼養管理の不備による影響が大きい。
・分娩直後にエネルギー不足になると体内の脂肪を肝臓でエネルギー源として利用するが、体脂肪が急激に動員されると血中ケトン体が増加してケトーシスが、また肝臓に脂肪が過剰蓄積されると脂肪肝が発生する。
 
○ルーメンアシドーシス
・分娩直後の泌乳牛に濃厚飼料を多給すると反芻胃内で乳酸の発生が急増し、胃内のpHが急速に低下してその機能に異常をきたす疾病。
 
※参考資料『広岡博之(2013)ウシの科学 朝倉書店』

乳牛の夏季不妊症

・暑熱ストレスは、横臥時間の減少、乾物摂取量の減少、産乳量の減少、直腸温の上昇を伴う。
 
・再現性のある根本的な解決策は見つかっておらず、大型扇風機による風、細霧などをウシの体表に直接当てて体感温度を下げる方法が主体となっている。
 
※参考資料『広岡博之(2013)ウシの科学 朝倉書店』

牛乳の乳成分の変動

・牛乳の品質は、個体差、乳期、乳量水準、栄養管理、飼養環境等の様々な要因によって変動する。
 
・乳成分は個体差が大きいものの、乳期による変動が大きく、乳量の多い泌乳最盛期に乳脂率、乳タンパク質とカルシウム含量が最低になり、乳量が減少する泌乳後期に上昇する。
 また乳牛の産次が進み、乳量が多くなると、乳脂率と乳タンパク質率は低くなる。
 
・夏季の暑熱ストレスが厳しいと乳量の減少だけでなく、乳脂率、乳タンパク質率、カルシウム含量などが低下する。
 
※参考資料『広岡博之(2013)ウシの科学 朝倉書店』

乳成分の改善

○乳脂肪の構成
・乳脂肪は、反芻胃で生産された酢酸と酪産から合成される炭素数が16以下の低級脂肪酸と、飼料中の脂肪や体細胞から構成される炭素数が16以上長鎖脂肪酸で構成されている。
 
○低級脂肪酸の増加
・反芻胃内の酢酸生産量の増加が大きく影響するが、濃厚飼料を多給した場合には反芻胃内pHが急激に低下して、酢酸生産量が減少する。
 飼料中の繊維含量を適度にして反芻胃内pHを一定に保ち、酢酸生産量を増やすことが効果的。
 
○長鎖脂肪酸の増加
・反芻胃で分解されにくい脂肪酸カルシウム(バイパス脂肪)の給与や脂肪含量の多い綿実などの給与が効果的。
 
○乳タンパク質の改善
・乳タンパク質はアミノ酸から合成されるが、その供給源はルーメン微生物の菌体タンパク質と第一胃で分解されなかった非分解性タンパク質。
・微生物タンパク質の合成量増加は、給与飼料中のタンパク質とともにデンプン含量を充足させることが大切。
・非分解性タンパク質とアミノ酸の補給は、加熱大豆などの非分解性タンパク質の多いタンパク質飼料や、リジンやメチオニンを含んだバイパスアミノ酸製剤などで行われる。
 
※参考資料『広岡博之(2013)ウシの科学 朝倉書店』

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください