放牧の効果と課題

放牧の効果と課題についてメモ書きしています。
 
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放牧、工場式畜産の食品の品質、牧草地の管理

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  1. 放牧の状況
  2. 放牧の効果
  3. 放牧の課題
  4. 放牧の事例
  5. 牧草の栄養
  6. 繁殖と生産
放牧の状況

・乳用牛の約2割、肉用牛の約5%で実施されている。(季節放牧等を含む)

放牧の効果

・飼養管理、飼料生産の省力化
・購入飼料費の削減
・繁殖成績の向上
・里地里山の保全
・耕作放棄地の解消

放牧の課題

●放牧の拡大に際しての課題
 
・放牧実施のための指導者の育成
・放牧のためのまとまった土地の確保
・周辺の地域住民の理解醸成
・放牧により生産される畜産物の品質向上や安定生産

放牧の事例

①集約放牧
・小さな区画の牧区を短い期間で順番に利用することにより、栄養価の高い状態で牧草を家畜に採食させ、草地と家畜の生産性を高める技術。
・ペレニアルライグラス等の高栄養牧草を用い、短期輪換放牧するとともに、余剰草を収穫貯蔵し、適宜補給することにより、ニュージーランド並みの高い生産性を可能にする。
 
※集約放牧については以下の記事も参照。
集約放牧の概要
 
②周年放牧
・西南暖地において、同一草地について夏期放牧-秋期休牧・立毛貯蔵-冬期再放牧。
・水田裏にイタリアンライグラスを播種し、冬期に放牧利用する。
 
③遊休棚田放牧、低投入持続型放牧
・中国・四国地方において、土壌保全機能の高いシバ草地等を利用し、棚田等に簡易牧柵を用いて放牧を行う。
・個体識別による塗布適期の判定、体重による塗布量の設定等によるダニ駆除薬剤の塗布作業の自動化と塗布量の節約が可能な装置を開発。
 
④マクロシードペレットの利用
・大粒肥料に牧草種子を付着させたマクロシードペレットの利用により、不耕起で草地更新や造成を可能にする牧草導入・定着技術を開発。

牧草の栄養

・放牧牛の採食量は草量により変化するが、草量も植物の成長とウシの採食の動的相互作用で変動する。
 
・春季の牧草は栄養価が高く、ウシの採食量は増加するが、夏季以降の牧草は栄養価が低下し、採食量は減少する。
 
・一般に、放牧によって短い草丈に維持された牧草は栄養価が高くウシの嗜好性が高いことが知られている。
 
・放牧地の生草は繊維含量が低く溶解性のタンパク質含量が高くなることもあり、第一胃の微生物活性と栄養吸収能を低下させることもある。
 
※参考資料『広岡博之(2013)ウシの科学 朝倉書店』

繁殖と生産

●繁殖
 
・繁殖牛を放牧すると適度な運動やストレスの低減により、受胎率の向上や発情間隔の正常化、難産の低減などの繁殖機能の正常化が期待できる。
 
・放牧地での効率的な発情検出法や発情時の捕獲法などの放牧特有の繁殖技術が必要になる。
 
●生産
 
・日本では、搾乳牛や肥育牛の放牧は少ないが、栄養価の高い牧草を利用することで舎飼畜産と同等の産乳量と肥育増体の成績をあげることも可能。
 
・搾乳牛を放牧すると、生草成分に由来するカロチン、ビタミンEおよび抗がん作用をもつ共役リノール酸(CLA)などの機能成分が牛乳中に多く含まれるようになることがわかっている。
 肥育牛の放牧でも、同様の機能成分を含んだ良質の赤肉生産が期待できる。
 しかし、日本では牛乳の乳脂肪率や牛肉の脂肪交雑度が市場評価の基準となっており、放牧の有用性が十分に評価されていない。
 
※参考資料『広岡博之(2013)ウシの科学 朝倉書店』

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