湖沼の水質浄化の概要

湖沼の水質浄化についてメモ書きしています。
 
※参考サイト
湖沼の水質浄化 – 環境技術解説|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア

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  1. 湖沼の水質汚濁の現状
  2. 湖沼の水質汚濁の原因
  3. 湖沼の水質浄化技術
湖沼の水質汚濁の現状

・昭和46年の環境基準の告示以来、河川ではBODの環境基準達成率が大幅に改善され、平成19年には90.0%に上昇しているが、湖沼のCODの環境基準達成率はきわめて低く、ここ数年である程度改善されたものの、いまだ50%程度の水準に過ぎない。

湖沼の水質汚濁の原因

・湖沼等の水質に影響を与える原因は大きく分類すると、流域から流れ込む”外部負荷”、湖沼内の生物などによる”内部負荷”、及び降雨などによる”直接負荷”に分けることができる。
 
①外部負荷
生活排水、工場排水、畜産排水など
 
②内部負荷
底泥からの溶出、湖沼での生物生産
 
③直接負荷
降雨、養殖
 
・湖沼が閉鎖性水域であるため水の滞留時間が長く、汚濁物質が蓄積しやすいことも、湖沼の水質改善が進んでいない背景の1つとして挙げられる。
 富栄養化がその例で、窒素やリンなどの栄養塩類が必要以上に蓄積され、濃度が高くなる。
 富栄養化が進行すると、窒素やリンなどを栄養分とする植物プランクトンなどが異常増殖し、アオコの大量発生や魚介類の大量へい死を引き起こすだけでなく、上水道や農工業用水、水産資源への影響など、水利用の観点からも大きな影響を及ぼすおそれがある。
 
※富栄養化対策については以下の記事参照。
富栄養化対策の概要

富栄養化対策の概要

湖沼の水質浄化技術

1)流入河川対策
 
・湖沼に流入する河川水を直接浄化する。”吸着法”、”土壌処理法”、”植生浄化法”などがある
 
・これらの方法の多くは、浮遊物質(SS)の除去に優れているが、吸着法のうち接触酸化法等では窒素・リンの除去率が低くなる。土壌処理法や植生浄化法は、比較的広い面積が必要になる。
 
2)湖内対策
 
①底泥対策
 
・湖底に堆積した土砂・ヘドロ等の底泥対策として、浚渫船およびポンプ等で回収・除去する”浚渫”と、砂で覆う”覆砂”という方法がある。
 
・これらの対策により、底泥からの有機物や栄養塩類の溶出を低減することができる。
 ただし、底泥の再堆積等により効果が低下するため、効果を継続させるためには流入負荷量の削減等により栄養塩等の再堆積を抑制する必要がある。
 
②植生利用
 
○植生帯
・湖岸の浅い水域に”植生帯”を整備する。方法や、などがある。
・植生帯では、植生による浮遊物質(SS)の吸着や窒素・リンの吸収、微生物による分解などにより、湖水の水質を改善できるほか、植生を刈り取ることにより、SSや窒素・リンの吸収除去も期待できる。
 
○人工内湖
・流入河川の河口部に”人工内湖”(人工的な小さな湖沼・池)を設ける手法。
・流入河川の負荷を削減するとともに、沿岸の生態系機能を向上させることができる。
 
③流動制御
 
○分画フェンス
・湖沼表層を止水性の”分画フェンス”などで仕切り、アオコ等の拡大防止を図ることによって、植物プランクトンの増殖を抑制する方法。
 
○散気装置で浅層曝気
・湖水に比べて低温・高密度の流入河川水を生産層より下層へ送り込み、栄養塩の供給を断って藻類の増殖を制御する方法。
 
④酸素供給
 
○深層曝気
・湖内底部に空気を送り込み、酸素濃度の低い底層水を水面まで上昇させて溶存酸素(DO)を供給した後、底層に還流することによって、底層の還元的環境を改善することができる。
 
⑤直接回収
 
・湖内の汚泥や藻類等を直接回収する方法として、回転ドラムろ過法や砂ろ過法など、ろ過による除去・回収を行う方法がある。
 また、アオコや赤潮を含んだ水を吸い込み、高圧・高速で衝撃板に噴射し、衝突時の物理的ショックを利用して処理する方法などもある。
 
⑥その他
 
○浄化用水
・湖沼よりも水質が良好な近傍の河川水などを湖沼に人工的に導入する。
・これにより、湖沼水の汚濁物質を希釈し、水質を改善することができる。
 
○水草管理
・水草を刈り取り、水草に含まれる有機物を系外に持ち出す。
・枯死した植物体を湖内に堆積させることなく、枯死植物からの溶出を回避することができる。
 
3)流域対策
 
①点源負荷(汚濁物質の排出ポイントが特定できる負荷)対策
 
・下水道整備の推進、工場・事業場の排水対策と水質汚濁防止法・各種条例などによる規制、畜産排水対策(家畜排せつ物法)など、水質汚濁物質の排出源に近い段階での対策によって負荷を削減する取組みが実施されている。
 
②面源負荷(汚濁物質の排出ポイントが特定しにくく、面的な広がりを持つ負荷)対策
 
・農地からの汚濁負荷を削減するため、水田からの濁水の流出防止や、減農薬・減化学肥料栽培などの環境保全型農業の推進が図られている。
 
・雨天時に宅地や道路などの市街地から公共用水域へ流入する汚濁負荷を削減するために、初期雨水の貯留や、路面排水処理施設の設置などの対策例がある。

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