遺伝子組み換え技術による将来の収量アップ、新しい技術

遺伝子組み換え技術による将来の収量アップ、新しい技術についての情報をメモ書きしています。

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  1. 遺伝子組み換えによる収量アップの期待
  2. NBT、NPBT(New Plant Breeding Techniques)
  3. マーカー利用選抜(MAS)
  4. 遺伝子組み換え生物の最近の事例
遺伝子組み換えによる収量アップ

・除草剤耐性などは1~2個の遺伝子を操作するだけだが、収穫量のような高度の特性を実現するためには、はるかに複雑な操作が必要になる。
 
・組み換えによってできた新しい形質を安定させ、研究室だけでなく畑でも実現できるようにしなければならない。形質が複雑化すれば、形質の安定性は低下するので困難。
 
※参考情報『小島正美(2015)誤解だらけの遺伝子組み換え作物 エネルギーフォーラム』

 

・遺伝子操作は、毒を生産する遺伝子のスイッチを入れる事により、植物自然毒や食品中のアレルゲンを予期せぬ形で増やす可能性がある。
 
※参考資料『ポール・ロバーツ(2012)食の終焉  ダイヤモンド社』

 

●遺伝子組み換え作物と収量アップ
 
①窒素の利用
 
・植物は、内部に生息あるいは共生している細菌と協調して、空気中の炭素と窒素を、糖とアミノ酸に変換する。
 
植物はまず窒素をアンモニアに作り変える
→グルタミンシンターゼという酵素がアンモニアの窒素原子をグルタミン酸というアミノ酸に結合させる
→グルタミンに結合すると、窒素は他のさまざまな酵素により、アミノ酸などさまざまな小さな分子の中に移される。
→タンパク質や窒素を含む化合物に転換される。
 
・堆肥化された動植物性物質から得られる窒素の量は、植物が利用できる量よりもはるかに少ない。人間は空気から窒素を固定し、肥料とする方法を発見し、窒素供給の限界を克服した。
 しかし、あるところを超えるといくら肥料を施しても利用されず、流出して環境を汚染してしまう。
 
・植物の窒素利用能力を高め、より多くの肥料を植物性タンパク質に作り変えるようにする。
 ソラマメのグルタミンシンターゼの量を増やしたところ、生長は速まり、開花が早まり、より多くのタンパク質を含有した重い種子が実った。
 窒素に関わるもうひとつの重要な酵素として、グルタメートデヒドロゲナーゼがある。
窒素がふんだんにあるとき、グルタメートデヒドロゲナーゼは、植物が窒素を再分配し、窒素供給をうまく利用するために役立っている。
 この酵素は、アミノ酸から窒素を取り出し、他の化合物の合成に使われるケト酸とアンモニアにする。
 予備実験の結果、発現力の高いグルタメートデヒドロゲナーゼ遺伝子を加えられた植物は、これをもたない植物よりも大きくなり、バイオマスが増加することが明らかになっている。
 
②炭素の利用効率
 
・植物は、空気中の二酸化炭素から炭素を取り出し、水から取り出した水素と酸素とともに糖分子に変換する。
 
・光合成の基本的なプロセスは、炭素原子を3個持つ糖のような分子の中に、炭素を取り込む。この基本反応しか行うことができない植物はC3植物と呼ばれる。
 
・C4植物は、炭素四つの糖を作るための別の経路を持っていて、C3植物よりも2,3倍効率がよい場合がある。主要作物の中ではトウモロコシだけがC4植物。
 C4植物は炭素を四炭糖に固定するPEPカルボキシラーゼという酵素を持っている。
 
・1999年、ワシントン州立大のモーリス・クが日本人科学者たちとともに、トウモロコシからイネに、PEPカルボキシラーゼ遺伝子を導入する事に成功した。
このイネの収量は、親のイネよりも10~20%高くなった。
 従来の育種法では、C3植物にC4の形質を入れることはまだできてない。
 
③水と塩分の過剰
 
・水不足と塩分の過剰は収量を低下させる。
 どちらも植物から水分を奪い、浸透と呼ばれるプロセスによって、植物細胞の中の水分が外に出て行ってしまう。
 この水分損失は、ストレス反応の引き金となる。光合成は止まり、極端な場合、枯れてしまう。
 
・植物は塩分ストレスに耐性を持てば、限界農地においても、収容アップが望める。
 
・一部の植物は高塩分の条件に対して快適に生活できるよう進化してきた。
 ある植物はナトリウムを排出し、別の植物はナトリウムを細胞の中の器官である液胞に蓄積する。さらに、細胞を水を閉じて込めておくための化合物(浸透保護物質と呼ばれる)によって満たしている植物もある。
 多くの研究により、浸透保護物質を合成する酵素をコードする遺伝子を導入すると、植物の塩分ストレスに耐える能力が増すことが明らかになっている。
 
④土壌の質、アルミニウム
 
・アルカリ性か中性ならアルミニウムは植物の生長を妨げない形で存在することができるが、酸性度が上がるにつれて、植物に有害な水溶性の形質に変質する。
 土壌の酸性化は、一部の農法と酸性雨によって悪化する。
 土壌酸性化は、全世界の農地の40%に影響を与えていると推定されている。
 
・熱帯においては、アルミニウムの毒性により、農地の約半分で収量が80%も減少している。
 ごく低濃度であってもアルミニウムイオンは根の生長を阻害し、植物の生長と収量に影響を与える。
 
・植物は、アルミニウム耐性の仕組みをいくつか発達させてきた。
 あるものはアルミニウムを排除し、あるものはアルミニウムと結合し植物への吸収を防ぐ有機酸を分泌する。これらの酸を分泌し、防御の盾を作るのは根の先端。
 
・1997年、メキシコのイラプアトの国立ポリテクニック研究所のルイス・ヘレラ・エストレーリャは、パパイヤのアルミニウム耐性能力が、クエン酸を作る酵素であるクエン酸シンターゼをコードする細菌遺伝子を導入する事によって、向上したと報告。
 パパイヤは、より多量のクエン酸を合成して分泌し、それまで有毒だった土地でも生長できるようになった。
 
※参考資料『ニーナ・フェドロフ(2013)食卓のメンデル 日本評論社』

NBT、NPBT(New Plant Breeding Techniques)

・狙った場所を正確に改変したり、短時間で多数の遺伝子を改変したり、最終産物に余分な外来DNAを残さないなど従来の遺伝子組み換え技術とは異なる特徴を持つ。
 
・従来の遺伝子組み換え作物が、もともとその作物が持ち得ない外来遺伝子を導入操作することで新しい形質を持つ作物をつくりだしていたのに対して、NBTは遺伝子を形成するDNAの塩基ひとつだけを変えるなどして、自然界に起こる変異に近い方法で新しい作物を開発することができるメリットを持つ。
 従来の育種に近く、遺伝子を組み換えた痕跡がはっきりしないため、今の表示規制を適用するのが難しい可能性も出てくる。
 
・一部の反対派は、"遺伝子組み換え技術を使っていることを隠している"と指摘し、糾弾している。
 
※参考情報『小島正美(2015)誤解だらけの遺伝子組み換え作物 エネルギーフォーラム』

マーカー利用選抜(MAS)

・遺伝子の機能を分析することで品種改良に必要な情報を得ることができる。
 
・DNAマーカーとは、その品質や個体に特有のDNA配列のこと。このDNAマーカーを目印として、目的とする有用な遺伝子を見つけ出すことができる。
 
・この技術を使えば、植物の交配を何度も繰り返して選抜する必要が無く、初期段階の品種改良は実験室で出来る。
 畑で植物を育てて交配させ、よいものを選抜するという作業を繰り返す必要が無いので、時間も費用も節約できる。
 
・一代限りのハイブリッド種のように、同一品種としての特性を保持できないこともない。在来種のように、その種子が持っている有用な性質を、何世代も持続させることができる。
 
※参考情報『アンディ・リーズ(2013)遺伝子組み換え食品の真実  白水社』

遺伝子組み換え生物の最近の事例

・米国、遺伝子組み換えサケ
・ブラジル市街でデング熱対策の遺伝子組み換え蚊を1000万匹放出。
・オーストラリアで、モンサント社とバイエル・クロップサイエンス社による遺伝子組み換え小麦の開発が進んでいる。
 
※参考情報『アンディ・リーズ(2013)遺伝子組み換え食品の真実  白水社』

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