ビスフェノールAの健康影響についてメモ書きしています。
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ビスフェノールAの概要
●ビスフェノールAとは? ・化学式 (CH3)2C(C6H4OH)2の有機化合物。 ・主にポリカーボネート、エポキシ樹脂と呼ばれるプラスチックの原料として使用される。 ●ビスフェノールAが体内に取り込まれる経路 ・ポリカーボネート製の食器・容器等からビスフェノールAが飲食物に移行するケースや、食品缶詰または飲料缶内面のエポキシ樹脂による防蝕塗装が施された部分からビスフェノールAが飲食物に移行するケースなどが挙げられる。 ・国内で製造されるこれらの食品用の器具・容器包装については、早くから代替品への切り替えや、技術改良などの事業者の自主的な取組がされてきているので、飲食を通じて摂取する可能性のあるビスフェノールAは極めて微量。 国内で販売されているほ乳びんについても、ポリカーボネート以外の材質(ガラス製など)のものが中心。 ※参考サイト ビスフェノールAについてのQ&A|厚生労働省
内分泌系への影響
・動物の胎児や子供が、従来の毒性試験により有害な影響がないとされた量に比べて、極めて低用量(2.4~10μg/kg体重)のビスフェノールAの曝露を受けると、神経や行動、乳腺や前立腺への影響、思春期早発等が認められているという報告がされた。 ・厚生労働科学研究などによる研究成果として、ビスフェノールAを妊娠動物に経口摂取させると、これまでの報告よりもさらに低い用量(0.5μg/kg体重)から当該動物の子供に性周期異常等の遅発性影響がみられたことが報告されている。 ・これらの動物実験が科学的に確かなものかどうか、ヒトにも起こりうるのかどうかについては、国際的にも議論があり、未だに不明な点も多く、今後の調査研究の進展が必要だが、胎児や乳幼児では、体内に取り込まれたビスフェノールAを無毒化する代謝能力が大人に比べて低いと予想されること、また、エストロゲン受容体が機能する中枢神経系、内分泌系及び免疫系の細胞や器官は、胎児や乳幼児では発達途上のため、微量の曝露でも影響が残る可能性があることも指摘されている。 ・胎児や乳幼児以外への影響については、動物実験ではそのような低用量での影響が現れるという報告はなく、またそのような影響は胎児や乳児以外では、生体の恒常性維持機構が発達していることから発現しにくいと考えられていることから、現行の規格値(2.5ppm)と同じ程度のビスフェノールAの溶出があったとしても、成人への影響はないものと考えられる。 ※参考サイト ビスフェノールAについてのQ&A|厚生労働省
妊婦における注意点
●ポリカーボネート製のほ乳びんの使用について ・国内で市販されているポリカーボネート製ほ乳びんについては、ビスフェノールAの溶出の実態調査において、その定量限界(0.0005ppm)で測定できるか否かの程度の溶出しか認められなかったと報告されている。 一方、長時間での使用を考えた過酷な条件では、これを上回る量のビスフェノールAが溶出した事例があるが、いずれにしても、それらの実態は現行の規格値(2.5ppm)をはるかに下回るものと思われる。 ・諸外国をみても、現時点において、一般消費者にポリカーボネート製ほ乳びんの使用の中止を求めている国はない。 ●妊婦の食生活における注意点 ・成人の場合、ビスフェノールAの主要な曝露源としては、缶詰が指摘されている。 妊婦がこのような缶詰食品を多く摂取することにより、胎児がビスフェノールAに曝露する可能性がある。 ・近年、食品缶や飲料缶について、他の合成樹脂を容器に用いるなどの技術改良により、ビスフェノールAの溶出が少ないものへ改善が進んでおり、通常の食生活を営む限り、ビスフェノールAの曝露は少ないものと思われる。 ・缶詰容器には、金属の腐食を防止するため内面にポリエチレンテレフタレート製のフィルムが張られているものがある他、ビスフェノールAを原料とするエポキシ樹脂による内面塗装がされているものが多くある。 国内で製造される缶詰容器については、ビスフェノールAの溶出濃度が飲料缶で0.005ppm以下、食品缶で0.01ppm以下となるように、関係事業者によって自主的な取り組みがなされてきており、2008年7月には業界としてのガイドラインが制定されている。 なお、2006年の食品缶の国内流通量は、114.2万トン(国産31.9万トン、輸入82.3万トン)で、輸入品が全体の72%を占めている。一方、飲料缶の国内流通品は331.6万トン(国産325.5万トン、輸入6.1万トン)で、ほとんどが国産品。 ※参考サイト ビスフェノールAについてのQ&A|厚生労働省
・缶詰の缶は、スチールやアルミニウムで出来ているが、それらが内容物の中に溶け出したり、においがついたりするのを防ぐため、内側に合成樹脂が塗られている。 エポキシ樹脂が使われることが多いが、その場合ビスフェノールAが微量ながら溶け出す。 ・一部の製缶会社では、缶にペットフィルムをコーティングして、エポキシ樹脂を使うのをやめている。タルク缶と言われ、底が白く染められている。 ※参考資料『渡辺雄二(2015)コンビニの「買ってはいけない」「買ってもいい」食品 大和書房』
ネットニュースによる関連情報
●ビスフェノールAなどの内分泌かく乱物質によって肝機能に影響? ・肝臓が発達段階にある生後3日のラットに対して、4種類の内分泌かく乱物質をそれぞれ低用量で与え、曝露直後および70日後の肝臓組織を観察し、曝露されていない対照群ラットと比較した。 ・その結果、ビスフェノールA(BPA)と塗料や繊維に添加されるトリブチルスズが、ヒトの非アルコール性脂肪肝や脂肪肝においても見られる肝臓の損傷の原因となっていた。 また、曝露されたラットの肝臓遺伝子発現の分析より、内分泌かく乱物質が動物のエピゲノムの再プログラミングを誘導することが明らかとなった。
●ビスフェノールAの影響で精子数が減少? ・生まれたばかりの雄マウスにプラスチックの成分であるビスフェノールA(BPA)を経口投与で与えた。その結果、BPAと精子の生産の混乱に直接的な関連があることが発見された。精子を作成するために必要な繊細なDNA相互作用を化学物質が破壊すると考えられる。 ・合成エストロゲンであるエチニルエストラジオールにマウスを曝露させた。成長中の精巣を曝露したところ、曝露した動物の精子は細胞が両親の遺伝情報を組み合わせるプロセスである減数分裂が衰えていた。その結果、より多くの精子が死亡した。
●妊娠中のビスフェノールA曝露で母子に酸化ストレス ・ビスフェノールA(BPA)曝露の影響を調べるため、24組の母子の血液サンプルを分析した。血液分析により、高BPAレベルの母親とその子どもは、過剰な一酸化窒素由来のフリーラジカルへの曝露による酸化ストレスの兆候があることが示された。参加者は、血液中の酸化的損傷による副生成物を多量に有していた。
●缶詰、缶飲料からのビスフェノールAの溶出と高血圧の関連 ・地元のコミュニティセンターから集めた60才以上の成人を対象に、無作為化クロスオーバー試験を実施した。参加者は殆どが韓国人女性であった。その結果、ガラスボトル入り飲料の摂取後に比べ、缶飲料を摂取した後の尿中BPA濃度は、最大1,600%増加した。収縮期血圧は平均4.5mmHg上昇した。どちらも統計的に有意であった。
●極微量のビスフェノールAによってサルの胎児の臓器に異常が発生 ・妊娠中のメスのアカゲザルとその胎児における化学物質の血中濃度を検討。アカゲザルに一日一回非常に低レベルのBPAに曝露させたが、これはヒトが毎日曝露しているBPAレベルよりもはるかに少ない。 ・その結果、BPAに曝露されていない胎児に比べ、BPA曝露胎児の乳腺・卵巣・脳・子宮・肺・心臓組織において重大な有害作用のエビデンスを発見した。
●ビスフェノールAが低分子量GTPアーゼに影響? ・ビスフェノールA が2つの異なる低分子量GTPアーゼ(K-RasおよびH -Ras)と結合し、GDPがGTPと交換することを防止することを実証した。