地球温暖化、気候変動の概要についてメモ書きしています。
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- 世界の二酸化炭素排出量
- 気候変動のモデル
- 温暖化
- 氷河の融解、海面上昇
- 海洋の酸性化、海洋循環の変化
- 生態系への影響
- 自然災害リスク
- 農業に与える影響
- 代替エネルギー
- 二酸化炭素回収、貯留技術
- 気候工学
- 政策対応
世界の二酸化炭素排出量
●炭素強度とは? ・GDPに対する二酸化炭素排出量の比率。 ●脱炭素化の要因 ・ほとんどの製品で、1単位当たりの生産に必要なエネルギーの量が、以前より減少。 ・IT、製薬、医療など今日急成長している経済部門は、成長速度の遅い、あるいは縮小に向かっている部門と比較して、1単位当たりの生産に使われるエネルギーの量が少ない。 非エネルギー集約型産業から非エネルギー集約型産業へシフトしつつある。 ・炭素強度の高い燃料(石炭など)から低い燃料(天然ガスなど)、再生可能エネルギーや非化石燃料(原子力や風力)へのエネルギー転換。 ●世界の二酸化炭素排出量の推移 ・1900~2010年で平均すると世界の二酸化炭素排出量は、年2.6%の割合で増加している。 ・1900年に約20億人だった人口が2012年には70億人を超え、1人当たりのGDPも増加しているが、脱炭素化のおかげで、二酸化炭素排出量の伸び率はGDPほど急激ではない。 ・この50年間では、排出量は年3.7%の割合で増えているの対し、脱炭素率は年1.1%であるため、二酸化炭素の排出量は年2.6%ずつ増加していることになる。 エネルギー効率は時代とともに向上しているが、そのスピードは排出量の増加を食い止めるには不十分で、二酸化炭素の排出量は増加の一途をたどっている。 ※参考資料『ウィリアム・ノードハウス(2015)気候カジノ 日経BP社』
気候変動のモデル
●気候変動の統合評価モデル ・気候変動だけでなく、気候変動の科学や経済学のほかの側面も含んだ包括的なモデル。 ・経済成長に始まり、二酸化炭素の排出、気候変動、経済への影響、気候変動政策の効果予測にいたるまでの一連のプロセスが一つのパッケージにまとめまれている。 ・二酸化炭素排出量は、人口、1人当たりGDP、GDPの炭素強度によって決定される。 ※参考資料『ウィリアム・ノードハウス(2015)気候カジノ 日経BP社』
●気候変動のモデルの限界 ・既知の損害のうち定量化できるものはごくわずか。 →現在定量化されていない被害や、少なくとも部分的には定量化不可能な損害は、既知の呼吸器系疾患から地表面温暖化に伴うオゾン公害増加、海洋酸性化の影響まで多岐に渡る。 ・本当に定量化できる部分は比較的狭い、低温度の範囲のものでしかない。 →3℃以上の温暖化の影響については、何が起こるかどうやって推計するのかはっきりしていない。 →小規模での変化の結果をそのまま延ばすようなシミュレーションを行っているにすぎない。 ・DICE(気候変動の大規模な経済モデル)では2乗で延ばすに近いことを主に行っている。 実際にはどうなるか分からない。指数関数的に増加するのかもしれない。 ●割引率 ・ワイツマンは気候変動で使う割引率(将来の価値を現在の価値に直すために用いる率)はずっと小さな値にすべきだ(それに伴い、将来の被害想定をずっと大きなものにすべき)と主張している。 ●ファットテールと気候変動対策 ・確率(または頻度)は小さいけれど、その被害がすさまじく大きい現象。 ・気候変動の被害は、まだ分からない部分が大きいが、ひょっとすると人類滅亡のような甚大な被害が起きる可能性もある。 ・そのような状況が考えられるとき、確率が小さいからあまり重視しないという考え方で問題ないのか? ・DICEなどの気候変動モデルでは、こうしたファットテールを考慮していないから、被害想定が低過ぎてしまっていないか、とワイツマンは指摘している。 ※参考資料『ゲルノット・ワグナー,マーティン・ワイツマン(2016)気候変動クライシス 東洋経済新報社』
温暖化
●"平均"気温の裏に隠れている事象 ・海の上の空気は通常、陸上の上よりも冷たい。 →世界の3分の2は海なので、世界全体の平均より陸上部分の気温は高い。 世界平均で10年あたり0.07℃の上昇の場合、陸上では0.11℃の上昇になる。 ・北極や南極の空気は他の場所よりも暖まっている。北極の温度は、地球平均の倍以上の速度で上がるとされている。 ※参考資料『ゲルノット・ワグナー,マーティン・ワイツマン(2016)気候変動クライシス 東洋経済新報社』
●温室効果における石炭の影響 ・世界のエネルギー需要の25%を石炭がまかなっている。 ・アメリカでは電力の半分を石炭に頼っている。 ・同じ量のエネルギーを生むために、石炭は天然ガスの2倍、石油の1.25倍の二酸化炭素を排出する。 ・エネルギー関連の温室効果ガス排出でトップを占めるのが石炭で、約4割を占める。 ●気温上昇におけるフィードバック効果 ○正のフィードバック ・地球の気温が上昇すると、海水の蒸発が促進される。 →蒸発した水分は温室効果ガス →さらに気温上昇。 ・北極海の氷や陸地の氷河が溶ける →氷河や氷床が消えて色が濃くなると、陸地や海面の太陽光に対する反射率が低下 →太陽光の吸収が増え、温暖化促進 ・アラスカ、カナダ北部、シベリアなどの永久凍土の溶解 →何世紀にも渡って氷に閉じ込められていた植物の残渣が腐り、余分な二酸化炭素を放出 →温暖化促進 ・海水の温度上昇 →海底のメタンハイドレートと呼ばれる氷状態のメタンガスが大気中に放出 暖かくなった海は二酸化炭素を吸収しにくくなるので、大気中に二酸化炭素が多く残留 →温暖化促進 ○負のフィードバック効果 ・乾燥地帯で旱魃が進む →風によって多くの土が舞い上がる →土の粒の大きさにもよるが、太陽光がふりそそぐのを妨げる →冷却効果 ・石炭やディーゼル・ガソリンを燃やす →大気中にエアロゾルと呼ばれる細かい粒子を放出 →太陽光がふりそそぐのを妨げ、冷却効果がある。 ○正または負のフィードバック効果 ・温暖化によって大気中の水蒸気増加 →雲が多くなる →雲は、雪や氷と同じく太陽光を反射して熱を跳ね返す面があり冷却効果がある。 一方、熱を捉えて温暖化を推し進める効果もある。 ↓ ・どのような雲で、どれくらいの高度にあるのか、陸上なのか海上なのか、などの条件によって変わってくる。 ・多くの気象コンピュータモデルにおいては、雲は温暖化を進める要素だとされている。 ※参考資料『クライメート・セントラル(2013)いま地球には不気味な変化が起きている 柏書房』
●アルペド効果 ・地球の気温が上昇して雪や氷が溶けると、地面や海面の露出が進み、地球が暗色化する。暗色化した表面はより多くの日光を吸収して温められ、温室効果を増幅させる。 ●温度上昇がさらなる温度上昇を引き起こす正のフィードバック ・地球温暖化が進み、海水が二酸化炭素で飽和状態になると、海中で複雑な化学作用が起き、海洋による二酸化炭素吸収量が減少。 ・メタンハイドレートのほとんどは海底堆積物中に存在するが、それ以外にもかなりの量が、寒冷地の永久凍土層の中に眠っている。 気温の上昇によって上記のメタンハイドレートから大気中に放出されるメタンの量が増加し、それが引き金となって温暖化のプロセスがさらに加速する恐れがある。 ●各温度上昇閾値と発生する恐れのある事象 IPCC第4次評価報告書 ○1℃ ・水不足の深刻化 ・サンゴの白化の増加 ・沿岸洪水の増加 ・両生類の絶滅の増加 ○2℃ ・20~30%の生物種で絶滅リスクの増加 ・疾患による負担の増加 ○3℃ ・穀物生産性の低下 ・氷床の消失による、数メートルの海面上昇の長期的な発生 ・医療制度への重大な負担 ○5℃ ・世界中で大規模な絶滅 ・穀物生産性の著しい減退 ・沿岸湿地の30%の消失 ・沿岸洪水や浸水の深刻化 ・世界の海岸線の変化 ・海洋循環の大規模な変化 ※参考資料『ウィリアム・ノードハウス(2015)気候カジノ 日経BP社』
氷河の融解、海面上昇
●海面上昇の要因 ○熱膨張 ・熱膨張は、水温、塩分、圧力に応じて海水の密度が変化することにより生じる現象。 ・基本的には、海水は温度が上がるにつれて膨張し、それによって海面が上昇する。 ・標準的な気候変動予測のもとでは、熱膨張による2100年までの海面上昇率は、0.2mと考えられている。 ○陸氷の融解 ・この推定については大きな不確実性がある。 ・代表的な氷床としては、グリーンランド氷床(海面上昇量に換算した氷の量:約7m)、西南極氷床(同上:約5m)、南極氷床がある。 ・南極氷床は、その部分の氷が非常に冷たいうえに安定しているため、今後数百年間における融解のリスクはほとんどないと見られている。 ・最近の推定では、氷河や氷帽の融解によってもたらされる2100年までの海面上昇量は、0.2mとされている。 ●巨大氷床の崩壊(グリーンランドや西南極における巨大氷床) ・グリーンランドの氷床がすべて融解した場合、世界の海面は7m上昇すると考えられている。 ・最近の推定では、グリーンランド氷床の融解が今後100年間で海面上昇にわずかに影響するという結果が示されている。 ・ある臨界点を超えると変化が一方向に加速する恐れがある。 グリーンランド氷床が温められて融解、縮小し、高度が低くなる。 →高度が下がると気温が上昇するため、縮小した氷床の表面温度は今よりも高くなり、それが原因で融解が加速 →氷床は温度が上がると暗色化する傾向があるので、より多くの太陽放射熱を吸収し、温度はさらに上昇 ※参考資料『ウィリアム・ノードハウス(2015)気候カジノ 日経BP社』
●氷の融解と海面上昇 ・地表の大気や海が暖められると、氷冠や山岳の氷河が解ける。 →海に流れ込んで水位が上がる。 ・海水の温度が上がると、水の膨張作用で水位が上がる。 ・暖かい水の方が冷たい水より速いスピードで膨張するので、温度が上昇すると、膨張の速度も速まる。 ○グリーンランド ・毎年、雪が降り積もるため、氷は常に積み重ねられて追加される。その一方で氷河は島の中央部からゆっくり海になだれ込むので、氷は減っていく。海に達した段階で、解けるか、氷山になって海を漂い始める。 →氷になって解けたり氷山として剥落したりする氷の量が降雪量より多ければ氷床は減っていく。 ・1990年代の初期からグリーランドの平均気温は2.2度も上がった。こうなると、夏場には氷床の表面が解けてくる。 →海水の温度も上がっているので、氷河から剥がれ落ちた氷山も溶ける →氷河が減ると、圧力は減るので氷河の動きは速まる。 ※参考資料『クライメート・セントラル(2013)いま地球には不気味な変化が起きている 柏書房』
●北極海の資源、航路 ・世界の石油とガスの未開発資源の推定22%が北極圏に眠っていると考えられている。 →氷が減れば減るほど、手の届く石油が増える。 ・氷が減れば減るほど北西航路(長年氷に閉ざされてきた、大西洋と太平洋の間の近道)は、パナマ運河の代替航路として現実味を増す。 ニューアークやボルティモアから上海や釜山に向かう便の船主は、6400kmほど航路を縮め、輸送料金と燃料代を節約できる可能性がある。 ※参考資料『マッケンジー・ファンク(2016)地球を「売り物」にする人たち ダイヤモンド社』
海洋の酸性化、海洋循環の変化
・大気中に放出される二酸化炭素の量が増えると、海洋が吸収する二酸化炭素の量も増加する。 ・海水中の二酸化炭素の一部は分解し、水と結合して炭酸になる。その結果、海水はいくらか酸性度を増す。 ・産業革命の前と比べると、海水の酸性度は3割ほど高まっている。 ・貝の殻やサンゴ礁は、ほぼ炭酸カルシウムでできているが、海水の酸性度が高まると、殻は作られにくくなり、すでに出来上がった殻も溶けやすくなる。 ※参考資料『クライメート・セントラル(2013)いま地球には不気味な変化が起きている 柏書房』
・大気中で増加した二酸化炭素は、海洋の表層水に急速に溶け込む。 海洋への炭素移動は大気中の二酸化炭素濃度を減少させると同時に、海洋の化学的性質に変化をもたらす。 ・二酸化炭素が海水に溶け込むと、海洋の酸性度が増し、海水中に含まれる炭酸カルシウムが減少する。 サンゴ、軟体動物、甲殻類、一部のプランクトンなど、多くの海洋生物の殻や骨格は炭酸カルシウムからできている。 →二酸化炭素濃度が高いところでは、研究対象になっている生物の多く(特にサンゴと軟体動物)に、石灰化や繁殖の速度の低下が見られる。 →こうした影響は、石灰化生物の減少と非石灰化生物の増加など、生物分布の大きな変化につながると見られている。 ●海洋循環の大規模な変化 ・メキシコ湾流(大西洋)の熱塩循環(水分や塩分濃度の違いにより生じた海水の密度の違いによって起こる海洋の大規模な循環)への影響。 ・メキシコ湾流の流れが変わると、温かな海水が北に運ばれなくなるため、北大西洋地域の気温は大幅に低下する。 ・メキシコ湾流の温かな表層水は北に向かって流れる →北上するにつれて温度が下がり、密度が高くなる。 →冷却された高密度の海水は、ある時点で海底に向かって沈み込み、ベルトコンベアに乗せられたように南へと還っていく。 ↓温暖化が進むと ・温暖化で高緯度地域の気温の上昇と降水(淡水)の増加が起こると、淡水は塩水より密度が低いため、表層水の密度を低下させる。 →それによって沈み込む力が弱まり、ベルトコンベアはスピードダウンする。それどころか、停止し、逆流する恐れさえある。 ・最新の研究は、メキシコ湾流が今後100年間で弱まることを示唆している。しかし、専門家の評価によれば、次の100年で急激な変動や崩壊が起きる可能性は低い。 ・メキシコ湾流の弱化を示すモデルでさえ、海流が減速することで引き起こされる冷却効果は地球温暖化の影響そのものよりも小さいため、ヨーロッパ北西部では今後も温暖な気候が続くとしている。 ※参考資料『ウィリアム・ノードハウス(2015)気候カジノ 日経BP社』
生態系への影響
●海水温の上昇とサンゴへの影響 ・サンゴは小さな生物の寄り集まりで、炭酸カルシウムでできている。 ・サンゴの内部には小さな藻が入っていて、両者はうまく共存している。サンゴは藻に栄養を与え、棲む場所を与えて捕食者から守っている。藻のほうでは光合成によって糖分を作り、サンゴに供給する。 ・海水温が上がりすぎると、サンゴは藻を追い出しにかかり、藻は死んでしまう。 →サンゴにとっても糖分は必需品なので、それがなくなればサンゴもやがて死んでしまう。 →藻がなくなると、サンゴは通常の茶色から殻の本来の色である白に変わる(サンゴの白化) ・サンゴの白化は水温の急変、塩分の増加、光の加減などの環境の変化によって起こる。 ※参考資料『クライメート・セントラル(2013)いま地球には不気味な変化が起きている 柏書房』
●サンゴ礁 ・生息環境の破壊、汚染、過剰な漁、温暖化、海洋酸性化が原因で、世界のサンゴ礁の5分の1ほどがすでに死滅したと推測している。 ・大気中の二酸化炭素の増加によって生じる海洋の二酸化炭素濃度の上昇、海水温の上昇によって、サンゴ礁は長期的に減少傾向になると推測されている。 ●野生生物の絶滅リスク ・直近のIPCCによる報告書は、気候変動問題を放置した場合、全世界で約25%の生物種が絶滅の危機に瀕すると結論付けている。 海洋酸性化に起因した影響を考慮するともっと増加すると思われる。 ※参考資料『ウィリアム・ノードハウス(2015)気候カジノ 日経BP社』
自然災害リスク
●ハリケーン、熱帯低気圧 ・地球温暖化が進むと、水温の高い海域が広がり、ハリケーンの発生地域の拡大と強度の増大につながる恐れがある。 ※参考資料『ウィリアム・ノードハウス(2015)気候カジノ 日経BP社』
●温暖化と洪水 ・温暖化が進むと、海、池、川、地面からの蒸発が増える。 →上空にたくさんの水蒸気があるので、降雨・降雪量が多くなる。 →洪水の危険増大。 ※参考資料『クライメート・セントラル(2013)いま地球には不気味な変化が起きている 柏書房』
農業に与える影響
●気候変動が農業に与える影響 ○IPCC第4次評価報告書 気候変動に関する政府間パネル 第4次評価報告書に対する第2作業部会の報告(pdf) ・世界全体では、地球の平均気温が1~3℃の幅で上昇すると、食料生産能力が増加すると予測されるが、これを超えれば減少すると予測される。 ・旱魃と洪水の頻度の増加は、地域の作物生産、特に低緯度地域における地元での自給作物生産に悪影響を与えると予想される。 ・小規模な温暖化に対しては、栽培品種や播種時期の変更のような適応で、低~中緯度から高緯度地域における穀物収量を基準の収量またはそれ以上に維持することが可能。 ○悲観的な評価報告の要因 ・気候変動は、気候がもともと耕作限界に近い地域の大半に、土壌水分量の低下を伴う気温上昇を招く恐れがある。 ラテンアメリカ、アフリカ、アジアの多くの地域は、すでに食糧生産に適した気候よりも温暖であり、さらなる気温上昇は農業生産性の低下を引き起こしかねない。 ・気候変動は、農業に水を供給するシステムに、負の影響をもたらす可能性がある。 ○気候変動被害の緩和要因 ・二酸化炭素施肥、適応、貿易や経済における農業比率の低下など。 ○二酸化炭素施肥 ・二酸化炭素濃度が高まることにより植物の光合成が刺激され、成長が促進されること。 ・フィールド実験の結果を見ると、二酸化炭素濃度が上昇した環境では、小麦や綿花、クローバーの収量が著しく増加している。 ○適応策 ①短期的適応策 ・播種や収穫のタイミングの調整 ・種子や作物の変更 ・施肥や耕作手段、穀物乾燥といった生産技術の変更 ②長期的適応策 ・別の地域への移動 ・乾燥や暑さに強い新たな品種を植える ・土地利用法を変える ・水効率の高い灌漑システムの利用 ○IPCC第4次評価報告書における世界食料モデル ・適応策と貿易を考慮した研究は、気温上昇幅が3℃以下の場合、地球温暖化は世界の食料価格を低下させるという結果を示した。 ある地域の生産が打撃を受けたとしても世界全体の市場によって吸収される。 ※参考資料『ウィリアム・ノードハウス(2015)気候カジノ 日経BP社』
●真水が手に入りにくくなる ・氷河が解ける →世界人口の6分の1あまりが雪解け水に依存しているので、影響を受ける。 ・気温が上がると、雪解けの時期が早まり、春に一時的に水量は増えるものの、年の後半には少なくなり、需要が増える夏以降には枯渇してしまう。 ・気温が高くなり、水の蒸発が増える →雲が増え、雨が多くなる →水の循環速度が速まる →急に水の流量が増加して流れが速まるため、流域の土が十分に水を吸収する前に流れ去ってしまう。 →洪水が起こりやすくなる 蒸発が増えるため、地下水も欠乏する。旱魃の頻度が増える。 ※参考資料『クライメート・セントラル(2013)いま地球には不気味な変化が起きている 柏書房』
代替エネルギー
●太陽光 ・効率が悪い。受けた太陽光のうち、8~12%しか電気に変換できない。 ・晴天時に発電したエネルギーを蓄電しておいていつでも利用できる優れた方法が見つかっていない。 ●風力 ・風が強い場所は、人が住む場所から遠く離れている事が多い。 →遠距離の送電はコストが高くなり、距離が長くなるほどロスが増える。 ・タービンは、音がうるさい、視界を妨げる、鳥を殺しかねない、などの面があり、地元住民の反対を招くことがある。 ●水力 ・地球の大きな河川にはすでにおおむねダムが建設されている。 ・水力発電用のダムは二酸化炭素は生み出さないが、魚や森などへの生態系への影響が大きい。 ●地熱 ・地下深いため技術的に難しく、コストも高い。 ●バイオマス ・植物を燃やして直接エネルギーを得る素材。 ・燃焼させれば二酸化炭素を大気中に放出するが、この炭素はもともと大気中から植物が取り込んだものなのでプラスマイナスゼロで大気中の二酸化炭素は増えないということになる。 ・再生可能で、生産過程で化石燃料を使わない限り、大気中の二酸化炭素を増やす恐れがない。 ・化石燃料より効率が劣る。 ・化石燃料に取って代わるには、多くの作付けが必要で、農地を増やす過程で環境問題を引き起こしかねない。 ※参考資料『クライメート・セントラル(2013)いま地球には不気味な変化が起きている 柏書房』
●バイオマス発電 ○CO2排出 ・バイオマスを燃焼した場合にも化石燃料と同様にCO2が必ず発生するが、植物はそのCO2を吸収して生長し、バイオマスを再生産するため、トータルで見ると大気中のCO2の量は増加しない(カーボンニュートラル)と見なすことができる。 ○バイオマスの種類 ・乾燥系バイオマス ・水分をあまり含まず、乾燥しているバイオマス。 ・林地残材や製材廃材等の木質系バイオマス、稲わらやとうもろこし等の農業系バイオマスが含まれる。 ・湿潤系バイオマス ・水分を多く含んでいるバイオマス。 ・畜産からのし尿系バイオマスや水産系の残さ(魚肉等)、食品産業排水、食品廃棄物等の食品産業系バイオマス、下水汚泥、し尿や厨芥ごみ等の生活系バイオマスなどが含まれる。 ・その他 ・黒液・廃材等の製紙工場系バイオマスや、廃食用油等。 ○バイオマス発電技術 ・バイオマス発電は、原料となるバイオマスの選択、バイオマスエネルギーへの変換、バイオマスエネルギーを用いた発電の、3つのプロセスで構成される技術。 ・バイオマスエネルギーへの変換には、発酵技術によるメタン、エタノール、水素等の生成、高温・高圧プロセスによるガス化などがある。 ・最先端のバイオマス発電は、ガス化、ガス改質、コージェネレーションといった要素を組み合わせた複合的なシステムとなっている。 ※参考サイト バイオマス発電 - 環境技術解説|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア
●太陽光 ・IPCCは一部計算を始めており、太陽光発電のライフサイクルにおける温室効果ガス排出量はおよそ、天然ガスの20分の1で、石炭の40分の1。 ※参考資料『マッケンジー・ファンク(2016)地球を「売り物」にする人たち ダイヤモンド社』
二酸化炭素回収、貯留技術
●二酸化炭素回収・貯留技術(CCS) ・化石燃料(天然ガスや石炭等)を燃焼させた後に二酸化炭素を回収する技術。 ・燃焼の際に二酸化炭素を回収して別の場所に送り、何百年もの間貯留して、大気中に出さないようにする。 ・貯留場所の有力候補としては、枯渇した油田や天然ガス田など、地中の多孔質岩層がある。 ●石炭ガス化複合発電 ・粉砕した石炭をガス化させ、水素と一酸化炭素を発生 →一酸化炭素をさらに反応させ、高濃度の二酸化炭素と水素を生成する →その後、吸収液を使って二酸化炭素だけを取り出し、圧縮する。 ※参考資料『ウィリアム・ノードハウス(2015)気候カジノ 日経BP社』
●CO2固定技術 ・CO2固定技術とは、大気や排ガス中に含まれるCO2を固定する技術の総称。 ・技術的には、物理化学的方法(燃焼施設の排ガス中のCO2の分離回収に用いられる)、生物学的な固定法(植物による固定など)、地中や海中への隔離といった大規模な固定法まで非常に広範な技術群。 ○物理化学的な固定法 ・固定発生源からの排ガス中のCO2を分離・回収するのに主として用いられ、回収したCO2を有用な化学物質に変換するための後処理プロセスと組み合わせて用いられることが多い。 ○生物学的な固定法 ・植林などによるCO2の固定のほか、微細藻類などを用いたバイオリアクターにより、排ガス中のCO2を吸収する研究もある。 ●CO2の地中貯留 ○地中貯留への期待 ・CO2の貯留においては、隔離したCO2の大気中への漏出をどう避けるかが課題。 "化石燃料や地下水を長期間封じ込めていたような安定した地層ならば、CO2の隔離も長期間可能なはずだ"という考え方がある。 ・実際の石油井・ガス井でも、可採量を上げるため、地層中に天然ガスから分離したCO2や他の液体の注入が行われており、そのための技術も確立している。 地質調査技術なども含め、石油資源開発の技術体系が活用可能であることも、地中貯留に関心が集まる理由となっている。 ○帯水層貯留 ・CO2をタンカーやパイプラインで輸送して、地下の帯水層へ圧入し、貯留する。 ・帯水層とは、粒子間の空隙が大きい砂岩等からなり、水あるいは塩水で飽和されている地層のこと。 ・将来の貯留可能量が大きいと期待され、地中貯留のなかで最も有望視されている。 ○炭層固定 ・CO2を地中の石炭層へ注入し、それによってメタンの回収を促進するとともにCO2を吸着貯留する。 ・回収されたメタンは発電所などで利用する。 ○石油・ガス増進回収 ・CO2を石油・ガス層へ圧入し、それによって石油・天然ガスの回収を促進するとともにCO2を貯留する。 ・回収された石油・天然ガスは発電所などで利用する。 ○枯渇油・ガス層貯留 ・CO2を枯渇した石油・ガス層へ圧入し、それによってCO2を貯留する。 ●CO2の海洋隔離 ・海水中にCO2を送り込む海洋隔離については、生態系への影響など未解明な部分が多く、さらなる影響評価や技術開発が必要とされている。 ※参考サイト ・CO2固定技術 - 環境技術解説|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア ・CO2回収・貯留(CCS) - 環境技術解説|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア
気候工学
●ピナトゥボ・オプション、太陽放射管理(SRM) ・二酸化硫黄その他のエアロゾルを成層圏に散布 ・1991年のピナトゥボ山の噴火直後に似た状態にする。 ・エアロゾル粒子が太陽光を遮り、地球の気温が下がる。 ・硫黄は火山が噴出するものであり、すでに自然界に多く存在しているので安全と思われる。 ○エアロゾルを成層圏に運ぶ方法の案 ①バルーンをいくつもつないで支えたホースで硫黄を成層圏まで送り込む方法。"真珠のネックレス" ②25kmの高さの、膨らませて使う大煙突を作り、石炭火力発電所の排出物を成層圏にためる。"トロイダル(環状体)バルーン" ※参考資料『マッケンジー・ファンク(2016)地球を「売り物」にする人たち ダイヤモンド社』
政策対応
●炭素価格設定の制度 ○キャップ・アンド・トレード ・二酸化炭素に希少性をもたせることによって二酸化炭素排出の価格を引き上げる。 ・政府が自国の二酸化炭素やその他の温室効果ガスの排出量にキャップ(制限)を設ける法律を制定 その上で、二酸化炭素やその他の温室効果ガスを決まった量だけ排出する権利を付与する"排出枠"を、限られた数だけ発行。 ・この類の規制は、汚染削減の手段として世界中の政府によって使われてきた。 ・企業は、排出枠の所有に加え、売買もできる。 ・排出枠の価格の設定は、取引所で行われることもある。 ・石油採掘権、森林伐採権、電磁波の周波数大域の使用権、二酸化硫黄排出権などで利用されてきた。 ・EU域内排出量取引制度の中で実施された。 ・市場において炭素価格の乱高下を招く恐れがある。 ・過去の例では、排出権(排出枠)は、規制される企業に無償で割り当てられてきた。競争入札による排出枠の売却というアイデアもある。 ・炭素価格は変動するが、二酸化炭素の排出量は安定する。 ○炭素税 ・政府が二酸化炭素の排出に対して直接課税を行う。 ・排出量は変動するが、炭素価格は安定する。 ○炭素価格引き上げ以外の策 ・自動車、電化製品、建物など、エネルギーを使用する主な資本の省エネルギー化を義務付ける規制。 ・"グリーン"技術に対する補助金。コストを下げ、利用を促進するための経済的インセンティブが含まれている。 ・ガソリンなどエネルギーに対する税金。 ・業界による排出削減への自主的な取り組み →上記政策については詳しく研究されているが、地球温暖化対策としては非効率的で効果が低いことが分かっている。 ※参考資料『ウィリアム・ノードハウス(2015)気候カジノ 日経BP社』
●消費者の行動に対する注意点 ○単一行動バイアス ・人々は、たった一つのことしかしない。 →一つの対応を行うとその人の懸念はおさまってしまい、関心が他のことに移ってしまう。 ※参考資料『ゲルノット・ワグナー,マーティン・ワイツマン(2016)気候変動クライシス 東洋経済新報社』