工業式農業、畜産が必要とする石油資源、水資源の情報、気候変動など環境に与える影響などについてメモ書きしています。
※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。
石油資源
・近代的農業は、石油を多く使用する機械や石油化学製品(化学肥料、殺虫剤など)に頼っている。"土地を介して石油を食料に変える作業" ・石油価格が2倍になれば、米国の穀物は約20%高くなる。工場式農場で生産される肉のコストの3分の2は穀物などの餌が占めているので、肉の値段も上がる。 ・科学的農業が進んだ結果、収穫できるエネルギーより多くのエネルギーを燃料、重機、殺虫剤、化学肥料という形で農地に投入するようになった。 一方、とうもろこしを有機栽培すると、必要とされるエネルギーが現行の方法より31%減る。 ・英国の土壌協会の調査では、鶏肉と卵に関しては集約型の方がエネルギー効率が良かったが(有機では鶏が運動スペースを与えられ、長生きするため)、それ以外は有機型の方が良かった。 同協会の、政府の公式な調査に基づく統計によると、有機型が必要とするエネルギー量は、集約型に比べて、牛乳で38%、牛肉で20%、豚肉で13%少なかった。 ※参考資料『フィリップ・リンベリー(2015)ファーマゲドン 日経BP社』
水資源
・世界中で消費される真水のおよそ4分の1は、食肉や乳製品を生産するために使われている。 ・同じカロリーを生産するのに、食肉は、野菜やそのほかの植物のおよそ10倍の水を使う。 ・工業型畜産で用いる濃厚飼料を作るのに必要な水の"エコロジカルフットプリント(人間の活動が環境に与える負荷)"は、牧草地の草やサイレージ(貯蔵牧草)などのフットプリントの5倍になる。 放牧して育てる場合、必要とされる水は草を育てる雨だけ。専門家の試算によると、穀物ベースの飼料は、牧草ベースの飼料の43倍もの灌漑用水を使っている。 ・多くの国々はすでに、自然による補充を上回る速度で、帯水層から水をくみ出している。国連は、農業が世界的な水不足の最大の原因になっている、と警告する。 そして、雨が地中に戻す水よりも多くの水を地中からくみ上げるという単純な方程式が、海面の上昇を招いており(くみ上げられた水は最終的に海に流れ込むため)、海面上昇の4分の1はそれで説明がつくとされている。 ・科学者は地球の地下水の量は、20世紀末頃には1960年代の2倍のスピードで減少していたと報告する。 ・中東、北アフリカ、アジアとヨーロッパの一部では、帯水層の水は、降雨での補充が追いつかないスピードで吸い出されている。 科学者は、地下水の水位があまりにも低くなり、じきに"普通の農場主の技術力では手が届くなる"時期がくるだろう、と警告する。 ・水利用のバランスを崩すのは、大量の肥料と灌漑によって育てた作物を濃厚飼料にするシステムで、現在ではそれが一般的になっている。 ・農薬や肥料、家畜の汚物による汚染も含め、穀物や大豆を主とする濃厚飼料が水資源にかける負荷は、純粋な放牧に比べて、60倍も高くなる可能性がある。 ※参考資料『フィリップ・リンベリー(2015)ファーマゲドン 日経BP社』
バイオエタノール
・エタノール混合ガソリンの燃焼による大気汚染の悪化、水の消費量の増加、水質汚染の悪化などが起こる。 ・エタノールが10%混合されたガソリンは、在来型ガソリンよりも揮発性が高い可能性があり、軽量の炭化水素がより多く大気中に排出されかねない。 エタノール混合ガソリンは、エンジンの密閉部やガスケットから染み出る傾向が高く、この事によってもさらに多くの炭化水素が大気中に排出される。空気中の炭化水素が増加すると、対流圏オゾンなどの主要な汚染物質が増加することが多い。 エタノール蒸留所の需要増加を満たすために、トウモロコシの作付面積が増し、窒素やリンなどの肥料の使用が増え、それが下流に流出。 灌漑用水を利用したトウモロコシの生産には大量の水が必要。トウモロコシ由来のエタノール約1リットルにつき、約170リットルの水が必要。 ・トウモロコシ由来エタノールの方が、生産過程で排出される温室効果ガスの量が多いことを示す強力な証拠がある。 トウモロコシ由来エタノールの生産によって排出される酸化窒素などの強力な温室効果ガスが相対的に多い一方、在来型ガソリン燃料のサイクルで排出されるガスには、二酸化炭素など、温室効果の弱いガスが相対的に多く含まれている。 ※参考資料『エリック・シュローサー(2010)フード・インク 武田ランダムハウスジャパン』
気候変動
・人類が引き起こした地球温暖化のうち約3分の1は、食料を生産し分配する世界のシステムに起因。 国連が出した報告書"Livestock's Long Shadow"によれば、家畜部門だけで、世界全体の温暖化の18%を引き起こしている。これは、すべての航空機、電車、汽船による排出量より多い。 ●土地利用との関係 ・温暖化のうち、18%は"土地利用の変化"と関係があり、その大半が食料システムに起因。 ブラジルやインドネシアなどで、蓄牛のための牧草地を拡大したり、家畜の飼料を栽培、パーム油の原料となるアブラヤシの大規模栽培のため、熱帯雨林が伐採され、湿地や泥炭湿原が消失している。 ※パーム油 ・クッキー、化粧品、石鹸、シャンプー、柔軟剤など幅広く使用されている。 ・アブラヤシの大規模栽培地が、東南アジアの熱帯雨林や泥炭地に食い込むにつれ、こうした土地を覆っていた自然の沼沢林が伐採され、土地が干上がり、泥炭の豊富な土壌から二酸化炭素とメタンが放出される。 ※畜産 ・世界的に見ると、耕作地の3分の1が飼料作物の生産に充てられている。 ・牧草地の管理が行き届いていないと、過放牧、家畜密度の過剰化、土壌の侵食につながり、土壌に蓄えられた炭素が大気中に放出される。 ・1キログラムの牛肉を生産するのに必要な穀物の量は20kg、豚肉の場合は7.3kg、鶏肉の場合は3.5kgという試算もある。 ・飼料の生産過程では、窒素肥料の合成から、化石燃料ベースの化学物質を飼料作物に用いる事にいたるまで、化石燃料を大量に消費する農法に頼っている状況。 ●農業との関連 ・人類が引き起こした地球温暖化の77%は二酸化炭素に起因するが、残りのほぼすべてをメタンと亜酸化窒素が占めている。後者の大半は農業に起因している。 主な排出源は、家畜排泄物のずさんな管理、肥料の使いすぎ、反芻動物の消化に伴う自然な排出、わずかながらの稲の生産も原因。 ・大規模畜産経営体(CAFO)の場合、排泄物の量が多すぎて、システムのサイクルに戻すことができない。 排泄物は、糞尿の"貯蔵地"に蓄積される。酸素が十分に供給されないので、排泄物からメタンガスや亜酸化窒素ガスが生じる。 ・世界で収穫される穀物の33%、大豆の90%が家畜の飼料として栽培されている。 飼料作物の栽培には莫大な量の肥料が使われていて、米国とカナダでは、合成肥料の半分、英国では70%が飼料作物のために使われている。 ・合成肥料の製造には、大量の天然ガスが必要とされる。(1トンの肥料に石油換算で1.5トンの天然ガス) ●廃棄物や輸送との関連 ・CAFOでは、肥育場へ飼料と家畜を輸送し、それから食肉処理場へ家畜を運ぶ。得られた肉を消費者へ輸送。 ※参考資料『エリック・シュローサー(2010)フード・インク 武田ランダムハウスジャパン』