有機農業の経済的影響に関する情報についてメモ書きしています。
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経済的効果
・一般的に言って、同じくらいの規模の農場で、付加価値がついて売れるとすれば、経営コストは有機農業のほうが少なく、粗収益はほぼ同程度となるようだ。 ・飼料作物生産での生産量の減少の主因は、施肥量が少ないからで、これは支出を減らすことでもある。 ※参考資料『カトリーヌ・ドゥ・シルギューイ(1997)有機農業の基本技術 八坂書房』
収量
・有機農業の技術理論、材料、手法、品種、機械、養水分管理、基盤整備、病害虫・雑草制御技術などが飛躍的に発達しており、化学肥料や農薬を使用した場合と同等かそれ以上の収量をあげる農家も多数存在する。 ※参考資料『有機農業営農ビジョン構築支援事業報告書(2015)有機農業の基礎知識 日本土壌協会』
・慣行農業に比べ、有機栽培による作物の収量は少ない(平均10~30%減)。 大面積栽培では、この減収は主として有機態窒素の投入量の不十分さと、その無機化の調節がしにくいために、肥効が不安定になることによる。 利用できる堆肥の量、マメ科作物栽培に使える面積、購入する有機態窒素のコストなどに依存する。 ・野菜作での収量の低さは、とくに病虫害によることが多い。 有機農業での防除手段は、慣行栽培と比べて難しく、被害を埋め合わせるのは不可能なこともよくある。 ・いくつかの生産では、栽培技術に習熟してくると、似たような形態の慣行栽培とほぼ同じ成果を上げるようになる。 ・慣行農業では環境をより人工的に操作でき、生産条件を均一にできるので、年による気象の変動による影響は、有機農業のほうが大きく出る。 低温・多湿で有機物の無機化が起こりにくい場合など影響が出る。慣行農業の場合は、可溶性の化学肥料で窒素を補給し、殺菌剤を利用すればよい。 反対に、有機農業における多様な作付けは、年毎の偶発的状況による損害を減らしてくれる。 ※参考資料『カトリーヌ・ドゥ・シルギューイ(1997)有機農業の基本技術 八坂書房』
投入経費
・有機農業生産に特有の品物の値段は高価なことが多い。特に、苗、種子、肥料。 ・苗と種子は、ヘクタールあたりの経費は高くなる。値段が高く、播種量が多いため。 ・除草機を動かす燃料代は、除草剤を散布する場合より高くなる。 ・作物の種類が多い場合は機械化が難しく、植え付けや収穫の経費も高くなる。 ・施肥は、窒素成分あたりとして、有機肥料は無機よりもはるかに高い。 ※参考資料『カトリーヌ・ドゥ・シルギューイ(1997)有機農業の基本技術 八坂書房』
労力
・有機農業の農場は、たいていの場合多様化されていて、大農場よりも多くの労力を必要とする。 ・生産技術的には、堆肥製造、手取り除草、機械除草・熱除草、緑肥栽培など慣行栽培よりも長い労働時間を要する。 ・生産量が少なく、市場が離れており、加工と流通の規模が小さい。 少量のものを加工し、包装、流通させることは、大量の場合と比べて高くつく。 ・貯蔵中、または輸送中の生産物の損失は、有機農業ではより大きい。自然状態での保存の仕方が、化学処理の場合よりも効率が悪いため。 ※参考資料『カトリーヌ・ドゥ・シルギューイ(1997)有機農業の基本技術 八坂書房』