肉用牛の基本情報

肉用牛の概要、種類、ライフサイクルなど基本的な知識をまとめています。

※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。

  1. 牛の特徴
  2. 肉用牛の種類
  3. 肉牛のライフサイクル
  4. 繁殖農家と肥育農家
牛の特徴

・牛は、もともとヨーロッパ南部からアフリカ北部、東南アジアにかけて生息していた”オーロックス(原牛)”が、約9000年前に家畜化されたもの。
 
・草食動物の牛は4つの胃を持ち、一度飲み込んだ食べ物を胃から口に戻してふたたび噛む、反芻動物。
 
・第一胃はルーメンと呼ばれ、細菌をはじめとした様々な微生物が生息しており、これらの活動により牛自身では消化できない植物の繊維質が発酵・分解される。

肉牛のライフサイクル

・肉牛は誕生後、肉質が充実するまで肥育され、その後、屠蓄場に出荷される。
・出荷までの期間は、肉牛の種類や性別、用途によって異なる。
 
●黒毛和種の場合
 
・子牛は3ヶ月ほどで離乳
・10ヶ月齢ごろまでは、牧草など繊維質の多い粗飼料を中心に育てられる。
・その後は、霜降り肉になるよう穀物を多く与えられ、30ヶ月齢前後で出荷。
 
●和牛とホルスタインの交雑種の場合
 
・25ヶ月齢前後で出荷
 
●ホルスタイン種の場合
 
・成長が早く、20ヶ月齢前後で出荷。
 
●繁殖牛の場合
 
・食肉用の牛を生むための牛(繁殖牛)は、平均的な場合10歳頃まで飼育され、9年間で7回ほど出産した後、肉用に出荷される。
 

・かつては親子同居の自然哺乳が一般的だったが、低泌乳量や分娩時の事故等で母牛が子牛を育てられなくなるケース、子牛の吸乳刺激が分娩後発情回帰を遅らせ、母牛の繁殖性が低下するケース、頻発する子牛の下痢への対応のため労働負担がかかるケースなど多くの問題が指摘され、最近では、黒毛和種などの和牛でも母牛を分離して人工哺乳する早期離乳法を取り入れる農家が増えてきている。
 
・雄は生後2~3ヶ月で去勢される。
 
・雌子牛の肥育は、去勢牛よりも発育能力が劣るため、肥育期間をより長く要し、生産コストは高くなるが、肉質は去勢牛よりも良いと考えられている。
 
※参考資料『広岡博之(2013)ウシの科学 朝倉書店』

繁殖農家と肥育農家

●繁殖農家と肥育農家
 
・母牛(繁殖牛)に子牛(素牛)を産ませる農家を”繁殖農家”、食肉とするために子牛を大きく育てる農家を”肥育農家”という。
 同じ農家が繁殖と肥育を手がける場合、”一貫経営”と呼んでいる。
 
●繁殖農家による飼育
 
・誕生した子牛を9ヶ月~12ヶ月齢まで育て、市場でセリにかけ、肥育農家に販売する。
・雄の場合は、肉質を向上させ、性質をおとなしくするため、2ヶ月齢ごろ去勢をする。
・母牛に対し、妊娠期、哺育期、哺育していない期間など状況に応じて飼料の種類、配合を変える必要がある。
 
●肥育農家による飼育
 
・肥育には、短時間でたくさんの肉をつける方法と時間をかけゆっくり育て、高級な肉をつくる方法があり、飼料の与え方も変わってくる。
 
・一般的に、肥育前期は骨格を作り上げ筋肉をつけていくため、牧草や稲わらなど粗飼料を中心に与える。
 中期は、筋肉の中に脂肪をためていく時期で、大麦などを加える。
 後期は、霜降り肉にするため、大麦の占める割合が高くなり、稲わら以外の粗飼料は与えないのが一般的。

肉用牛の種類

●肉専用種(和牛)
 
○黒毛和種
・和牛の主要品種。
・肉質、特に脂肪交雑(いわゆる”サシ”)の点で非常に優れており、”霜降り高級牛肉”を生産。
・肉専用種の飼養頭数のうち、約95%がこの品種。
 
○無角和種
・被毛色は黒色で黒毛和種より黒味が強い。
・肉質の面では脂肪交雑や肉のきめなどが黒毛和種より劣る。
 
○日本短角種
・脂肪交雑はやや劣る。
・体格が良く、放牧適性が高く粗飼料で効率的に赤身肉を生産。
・岩手県が主産県。
 
○褐毛和種
・肉質の点では黒毛和種に次ぐ。
・耐暑性に優れ、粗飼料利用性が高い。
・熊本県が主産県。
 
●乳用種(国産若牛)
 
○ホルスタイン種(♂)
・酪農経営の副産物である雄牛を去勢し、肥育する。
・肉質の点で輸入牛肉と競合。
 
●交雑種(F1)
 
○黒毛和種(♂)×ホルスタイン種(♀)
・乳用種の雌牛に肉専用種の雄牛を交配し、肉質の向上を図ったもの。
 

・乳用種の牛肉は、和牛、特に黒毛和種の牛肉と比べて肉質が大きく劣り、子牛の価格も黒毛和種と比べてかなり安い。
 
・搾乳用の乳用雌牛に黒毛和種の精液を人工授精し、子牛を高価で販売できる交雑種を生産する酪農家が増加している。
 
・交雑種は、乳用種よりも良質な肉が期待でき、さらに和牛よりも肥育期間が短縮でき、生産コストの削減が可能であるため、交雑種を肥育する農家は増加している。
 
※参考資料『広岡博之(2013)ウシの科学 朝倉書店』

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