遺伝子組み換え作物による収量の増加、農薬の使用量については、肯定的な情報と否定的な情報を目にします。とりあえず根拠がありそうな情報をメモ書きしています。
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農薬の使用量
○農家に対するメリット ・除草剤、殺虫剤の散布回数が減少する事によって、コストや労働時間が短縮され、特に小規模農家の場合、生産者への薬剤暴露の減少につながる。 ○2014年11月 ドイツ ゲオルグ・アウグスト大学のチームが「プロス・ワン」誌に発表した報告 ・ドイツの公的機関などが中心となってまとめた報告。民間企業は関与していない。 ・1995年~2014年までに発表された遺伝子組み換え作物に関する147の研究論文を総合的に分析(メタ分析)した結果、"農薬の使用量が減ったこと"、"収量が増えたこと"、"農民の収益が増えたこと"、"収量の増加や利益の向上は途上国で高かったこと"が明らかになった。 ○遺伝子組み換え作物の農薬使用量に関する基本データ ・バイテクによって改良された作物の採用によって、化学殺虫剤の使用量が37%減少するとともに、農業生産者の利益が68%増加する。 ・オーストラリアおよび中国では、遺伝子組み換え作物に用いる殺虫剤の使用量が80%減少した。 ・バイテクにより、1996年から2012年の間に殺虫剤散布量が5億300万キログラム減少した。その結果、農業の環境影響指数は18.3%減少した。 ※参考情報『小島正美(2015)誤解だらけの遺伝子組み換え作物 エネルギーフォーラム』
・バイテク業界が発表した資料によれば、実際に遺伝子組み換え作物のために除草剤の使用量は増加しており、政府の資料もそれを裏付けている。 ・ある研究者が全米の数値から推計したところでは、除草剤の使用量は1996年と比べて6万2500トンも増えた。 ・農務省(USDA)の資料でも、近年、実際に遺伝子組み換え作物が広い範囲で栽培された結果、農薬の使用量が増えたことを示している。 また、遺伝子組み換え作物が導入されたことにより、農薬の使用量が過去9年間に約5万5000トンも増加したという調査報告もある。 ・害虫抵抗性の作物は、Bt毒素によってある種の害虫を駆除するが、その他の害虫は生き残ることができる。そこでBt毒素では死なない害虫による被害を抑えるために、もっと多くの殺虫剤をまくことになる。 ある種の害虫を減らしたことによって、別の害虫をはびこらせてしまった例もある。 ※参考情報『アンドリュー・キンブレル(2009)それでも遺伝子組み換え食品を食べますか? 筑摩書房』
・1996年、アルゼンチンは南米で初めて遺伝子組み換え作物の栽培を許可した。現在、アルゼンチンで栽培される大豆はすべてGM。 初期は173%の収穫高を誇ったが、それは続かなかった。GM作物の除草剤耐性をあてにして除草剤を多用するうちに、雑草の耐性が増し、同量の収穫高を得るにはより強い薬剤を使わなければならなくなった。GM以前に使われていた殺虫剤と除草剤のおよそ10倍の使用量になった。 ※参考資料『フィリップ・リンベリー(2015)ファーマゲドン 日経BP社』
収量、収入アップ
●遺伝子組み換え作物の収量、収入に関する基本データ ・遺伝子組み換え作物の経済的利益は、1ヘクタール当たり平均117ドルであり、その大半が発展途上国の農業生産者のものになる。 ・農業生産者は、遺伝子組み換え種子への投資1ドルに対し、平均で3.33ドルの収益をあげる。 ・遺伝子組み換え作物は、従来型農業と比べ収量が平均7~22%高い。従来型農業は、有機農業と比べ収量が平均20~35%高い。 ・中国では、遺伝子組み換え作物により収量が7%増加した。 ・作物バイテクにより、過去15年間に食糧生産量が3億1180万トン増加した。 ※参考情報『小島正美(2015)誤解だらけの遺伝子組み換え作物 エネルギーフォーラム』
・インドでは、高価な遺伝子組み換え種を買うために誘われるまま借金をしたものの、約束された収穫を得られず、借金と高利貸しの容赦ない取立ての犠牲となってしまった。 ※参考資料『フィリップ・リンベリー(2015)ファーマゲドン 日経BP社』
農家のその他のメリット
○遺伝子組み換え種子を購入した場合の特典、優待 ・作物保険プランで、バイオテクノロジー種子を使用している場合には保険料の割引きが受けられる。バイオテクノロジー種子を使用した場合には、作物保険の請求率が減ると保険会社を評価している? ※参考情報『小島正美(2015)誤解だらけの遺伝子組み換え作物 エネルギーフォーラム』